歓迎会
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後方ではいまだに楽しいおしゃべりが繰り返されている。
それまではほんの少し気になる程度だった言葉に、随分と苛々とさせられた。
小さく舌打ちをして、ウィスキーを再び飲み干す。
隣の男にお代りを手渡されて、そんな男の顔が少し悲しげに歪んだ。
「楽しそうですね。私もああして飲みたいですが、次に帰ってこれるかどうか」
「どこに向かう?」
「申し訳ないが、それは言えないのです」
首を振った男の様子に、禿頭の男はそうかと呟いて、再びグラスを飲み干す。
「少し静かにしてもらってくる」
「そんな。大丈夫ですよ」
「何……。あんな後方の連中など簡単なものだ」
立ち上がり身体をカウンターで支えれば、禿頭の男はどうやら相当酔っているようだった。それでも男に支えられ、身体を真っ直ぐに起こせば、ちょうど楽しげに会話する男達の姿が見えた。
いい気なものだ。
そう口にして歩きだす禿頭の男は、背後で男が小さく笑ったことに気付かなかった。
+ + +
「このチーズポテト美味しいですよ。中尉はいかがですか」
「ほんと。最初はどうなるかと思ったけど、美味しいわね」
リスのように頬を膨らませる様子に、周囲が小さく笑った。
注目を浴びてカリーナが戸惑ったように慌てて口元を隠す。
その様子が一段の笑いを誘った。
楽しげな雰囲気は、しかし、近づいてくる禿頭の男に気づいて静まった。
酔ったように頭すらも赤くしながら、しかし、足取りは確かに近づいてくる。
最初にアレスが気付き、次にウォーカーが気付いたころには、既に禿頭の男は席の傍にいた。
「随分と楽しそうだな」
唐突にかけられた声と強面の男の様子に、それまで楽しげであった装備企画課の面々は押し黙った。
沈黙を恐れと捉えたのであろう。
どこか別の場所を見つめる金髪の男――アレスに向けて、禿頭の男は語気を強くして、詰め寄る。
「お前に言ってるんだ。それとも女性相手じゃなければ話せないのか?」
強く言われれば、誰もが怯えを見せて声を出せない。
そんな状況下で、アレスは男を振り返った。
その表情に怯えはなく、どこか楽しげですらあった。
「ああ。騒がしくしたならすまない。気をつけるよ」
「謝る必要はねえ。ただあまり楽しそうなんで、少し俺も混ぜてもらいにきただけだ。なあ?」
禿頭の男が背後を振り返れば、顔見知りであろう男達が表情に笑みを作った。
どうように暇を持て余していたであろう男達が近づいていく。
どれも大柄な体格の良い男達であった。
小さな悲鳴はアレスの隣から。
男達の後ろに隠れるように逃げようとして、禿頭の男の視線に止められた。
「可愛い子を一人占めはずるいだろう。俺たちも混ぜてくれよな?」
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