歓迎会
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一般的な大衆店ではない。
どちらかと言えば、最前線の兵士達を慰労を目的とした酒場だ。
店主でさえも戸惑う状況に、頭をかいてどうするかと迷えば、ウォーカーがアレスの背を押すように店内に入った。
「酒の味はかわらんだろう。それにここで喧嘩が始まるのは胃に優しくないからな」
もっともだと思い、小さく笑えば、アレスは開いている席に歩きだした。
+ + +
そこはハイネセンを守る第一艦隊の陸上部隊が懇意にしている店であった。
戦傷によって退役した店主が開く小さな酒場だ。
訓練帰りに飲んだ帰りに立ち寄る。
店主こそ強面であるが、安く上手い料理と酒が出るとあって人気があった。
しかし、その日はいつもと様相が呈していた。
滅多に来ない女性客と、軍人らしくない文官風の男達。
最初こそ店内の様子に戸惑っていたものの、酒が入り、上手い料理が出てきて、次第に喧騒へと変わっていった。
それほどは大きくない声も高い女性の声に、カウンター席で禿頭の男が苦虫を噛み潰した。
ただでさえ女性の少ない陸上戦隊。
それも首都の防備を目的とする第一艦隊では戦場でストレスを発散させることもできない。
いい気なものだ。
どうやら話を聞けば、後方作戦本部の連中らしい。
軍人ではなく所詮は事務官と言うわけだ。
まだ若い青年が女性二人に囲まれている。
自分たちが訓練で汗水をたらしているというのに、後方で呑気に文字仕事か。
いい気なものだなと、禿頭の男はウィスキーを飲み干した。
それは明らかな八つ当たりであったが、後方部隊と前線部隊は元来仲が良くはない。
禿頭の男と同様の思いをした者たちは多くいて、ちらちらと後方で騒ぐ男達を見ていた。
「いい店だと聞いていたのですが、随分やかましいですね」
苛々として三杯目のウィスキーを頼んだところで、隣から声がかかった。
見れば不快そうに眉をひそめる男だ。
特徴的のないどこにでもいそうな軍人容貌。
それが後方を見る様子に、禿頭の男は苦虫を噛み潰した様に後方に視線をやった。
「ああ。いつもはそうでもないんだがな。今日は特別にうるさい」
「それは残念です。これから外に出るので、その前にと思ったのですが」
「何帰ってからまたくればいい」
差し出された杯を受け取って、男は静かに飲んだ。
それから男と話しながら飲んだ。
誘われるままに男は自分の経歴を語る。
配備された場所が如何に危険な場所であったか。
死と隣り合わせの戦場。
身体を張った訓練。
幾度もついた身体の傷。
「まったくですね。彼らは私達を消耗品とでも考えているのか」
彼らと言ったのが、誰であるかは禿頭の男はすぐに理解できた。
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