いち。
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場である。つまり私の事だ。言わせんな恥ずかしい。
友人が一ヶ月も持たなかった時点で一緒に辞めてしまえば違った未来もあったのだろうが、あまりの居心地の良さについ居ついてしまったのだ。で、大した仕事もしてないし成果も出していないのに、同期のほとんどがそんな私未満という事であれよあれよと出世してしまった。その経過の結果得た立場が在りもしない筈の『海軍提督』であり、そんな私の新たな配属先が───
「やっと着いたぁ……」
ふらふらと歩き続けて何時間だろう。熱に焼かれて燃え尽きる寸前の脳と意識で、ようやく目の前に現れたやたらでっかい建物を認識する。
築何十年……いや百年単位? ってレベルに古いデザインの建築物である。昔の資料で見た事がある。今の国家──内陸が『日本』とか呼ばれていた時代の、……なんだろう。下宿とかアパートとか、そういうの? 今の住居は基本的に高層ビルディングタイプが一般的で、富裕層は蜂の巣型のコロニーなんかに住んでいる。家と呼ばれるタイプの建築物は過疎地にわずかに残っているものだけだという。それに、目の前の住居は記憶にある『一軒家』なるものとは趣が違い、数人の家族構成ではなく、大規模な人数を収めるタイプのように見える。
「……おほぅ」
それはそれとして。
扉(自動で開かない!)や木造と見られる外壁にぺたぺたと触れてみる。
「はへぇ〜」
ちょっと、いやかなり感動しています。だってこんな歴史的な建築物が目の前にあるですよ。以前家族旅行で赴いた海外の建築物、お城とかそういうのにも感動したけれど、やはりアジア種としては同族の歴史の方が肌に合うっぽい。内陸にあった古代の城はもう現存していないと聞いたので、個人的にかなり残念。まぁ残っていたとしてもほとんどの地域に人がいない以上、荒れ放題枯れ放題になるんだろうけど。
「ふーむふむ。へー、これどうやって全体支えてんだろ。このぶっとい木を四角く切ったヤツが重心の中心なのかな。中はどうなって……」
「あ、あのっ」
「はひっ!?」
おっふ。夢中になりすぎたせいで人の気配に気づかなかった。
不覚を恥じ入りながら振り向くと、そこにはなんとも可愛らしい……学生? 綺麗な茶色い髪を大ざっぱに後ろでまとめた少女が、訝しげにこちらの様子をうかがっていた。私は背筋を正して彼女と向き合い、
「えー、大変ご無礼を。私、本日この島の……なんだっけ」
挨拶するつもりが色々ド忘れた。というかそうだ、後々確認しようと思ってたんだ、今時『漢字』とか難しすぎて読めないって。先ほどの地図ではなく、辞令をポケットから取り出して開き、女の子に見せる。
「すみませんお嬢さん、この……この文字を読めませんか」
「はわわ?」
なんとも不思議な声を上げて少女が紙に吸い寄せられる。どう見ても年下の子に訊かなければ
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