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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十二話 要塞攻略案
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もそれを認めた。もっともフェザーンと地球教の関係を知ってからは恐ろしくなって手を切ったと言っている。フェザーンも混乱した所為でそれ以降の接触は無くなったとも。現時点においてシャフトは憲兵隊、内務省の監視下に置かれている。本人もその事は分かっている。

「ガイエスブルク要塞に通常航行用エンジンとワープエンジンを取り付けさらに進路方向制御用の補助エンジンを側面に取り付ける事で軍事移動要塞とする。理論上は十分可能であると言えます」
皆が頷いた。理論上は可能だろう、ワープ航法は既に確立された技術だ。要塞を運ぶなど突拍子もない案だが考えてみれば運ぶ物が大きくなっただけだ。不可能ではあるまい。

「問題は実現性です。まず第一に質量とエンジン出力を調整しなくてはなりません。約四十兆トンの質量を持つガイエスブルク要塞を動かす事が可能なだけのエンジン出力が必要となるのです。膨大なエネルギーと言ってよいでしょう」
シャフトの説明に何人かが太い息を吐いた。アマーリエも小さく息を吐いている。

イゼルローン要塞の反乱が無ければ、こんな話を聞いたら馬鹿馬鹿しいと一喝しただろう。未だにこの話している内容が信じられない思いがする。悪い夢でも見ているのではないだろうか? いやイゼルローン要塞の反乱そのものが悪夢であることを考えれば解決策が悪夢になるのは当然か。まして解決策を提示したのがニーズ・ホッグであれば……。

「これを実現するためには同盟からの作戦案に有りましたようにそれぞれ十二基の通常航行用エンジンとワープエンジンを取り付ける必要があるでしょう。これの制御が技術面における問題になります」
「……」

「複数のエンジンを使う以上完全に連動させなければなりません。ワープエンジンの出力にばらつきがあれば、またその同期にばらつきがあれば、どのような結果になるか……。ガイエスブルク要塞は亜空間で行方を絶つか原子に還元してしまうという事も有り得ます」
シャフトの説明に皆が顔を顰めた。実現出来るのか、そう思ったのだろう。

「通常航行用のエンジンについても同様です。これらの出力にばらつきが有れば要塞は進路を保てません。バランスを崩し非常に危険です。先程も言いましたがガイエスブルク要塞をイゼルローン回廊に運ぶにはこのエンジンの制御が技術面における最大の問題になります」

「そして宇宙工学的な問題も有ります」
「工学的?」
アマーリエが声を出すとシャフトが“はい”と頷いた。
「質量四十兆トンを超えるガイエスブルク要塞がワープ・イン、ワープ・アウトした場合、それが一体通常空間にどのような影響を及ぼすのか。時空震の発生が致命的なものにならないか、その検証が必要です」
溜息が出た。わしだけではない、皆が溜息を吐いている。

「科学技術総監部としてはそれらの問
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