クズノハ提督邂逅
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詰め寄り声を潜めて確実に聞き取れるようゆっくり言った。
「それが突如消えたんだよ」
「は、消えた?」
「うん。持ち出された形跡も残った部品も、目撃者もなく」
駆逐艦といえど全長100m、重量は1000t以上の巨大な建造物。そんなものを目撃者も跡形も無く運び出すことなど不可能である。
「だからさ、もしかしたら艦娘になったりしたんじゃないか……って僕は思ってるのよ」
芝田はメガネを不敵に光らせ、声を潜めて周りに聞こえぬ様に意見を述べた。艦娘関係のことは関係者以外他言無用なのである。
「もしかしたら深海棲艦になったとか……って噂もあるな」
そこに少々低い女声がかけられた。
「うわっ! びっくりしたなぁ……」
「脅かすなよ安藤」
安藤は腰を抜かしたメガネを尻目に小声で話を続けた。
「”Верный(ヴェールヌイ)”以外にも、かの有名な長門型戦艦の長門と陸奥も行方をくらましたとのことだ」
「戦艦まで!?」
「それは知らなかったなぁ……」
「もしあの二隻が深海棲艦になどなろうものなら……」
安藤は深刻な表情で言葉を打ち切った。
「意外と大変なことが起こってるのな」
「マスコミには黙っていて貰っている様だが……いつまで持つことか」
「そもそも本人達に帰る気があるかどうかだろ」
三人を囲む空気が少し暗くなったところで授業の開始を知らせる鐘が鳴った。
午前の授業が終わり、昼休みに入った。三人は大学内の食堂の隅で話をしつつ昼食を取ることにした。
「ヴェールヌイ……だっけ? どうしてロシアの艦が消えたんだ?」
「”Верный(ヴェールヌイ)”は元々日本の軍艦だ。戦争で負けて賠償艦として引き渡された際に改名したんだ」
安藤はうどんを冷ましながら簡潔に答えた。
「ねぇ安藤。どうして”Декабрист(デカブリスト)”じゃなくて”Верный(ヴェールヌイ)”って呼ぶの?」
芝田が何気無く質問した。
「何だそのデカなんちゃらって?」
「”Верный(ヴェールヌイ)”はその後”Декабрист(デカブリスト)”って改名されて練習艦になったんだよ」
「あの瞬間彼女は駆逐艦としての艦生を終えた、と私は思っている」
「駆逐艦……ねぇ」
芝田は少々呆れた目で安藤を見つつスパゲッティを頬張った。
話を聞き続けた葛葉も後に続く様にラーメンをすすり始めた。
「ところで葛葉、資材はどうなったんだ?」
葛葉は一瞬、何の事か分からないという様な顔をしたがすぐに思い出したとばかりに答えた。
「ああ、ちゃんと問い合わせた。建造や開発の記録とかも出したし……今は返事待ちかな」
「そっか。良い返事が来るといい
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