2部分:第二章
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わしたのは麗人だった。麗しい瞳を憂いの色で満たし細い整った顔は悲しみのあまりか白くなっていた。その麗人が姿を現わしたのだった。
「これで。この方が幸せに旅立つことができるなら」
「構わないのですね」
「はい」
また使用人の言葉に対して頷くのだった。
「そうです。私はそれで満足です」
「左様ですか」
「この方が大事に思われていた人」
それが彼の叔父だったのである。
「その方に見届けてもらって。幸せだったと思います」
「ですがエリーゼ様」
使用人はまた麗人に声をかけてきた。
「貴女は。それで」
「いいのです」
しかし彼女はそれをいいとするのだった。
「私はこれで。この方が幸せに旅立てるなら」
「そうなのですか。それで」
「それだけで。ではさようなら」
麗人はその左目から涙を流しながら告げた。
「ハイネ様、これで永遠に」
次に右目から涙を流しそのうえで彼を見るのだった。静かに微笑みそのまま事切れてしまった彼を。涙を流しながら見続けるのであった。
ハインリヒ=ハイネはその叔父に終生庇護されていた。叔父が何かにつけ彼を助けていたからこそ詩人になれたとさえ言える。彼が病で動けなくなってからも彼を引き取り護り続けた。彼はハイネより先に死んでしまったがハイネは彼のことを終生愛し続けていたという。そして彼の最後の枕元にはエリーゼという女性が通っていた。彼女のこともまた話に残っている。その愛もまた。全ては愛により残された話である。
褥の墓場 完
2009・4・29
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