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少年と女神の物語
第九十七話
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そもそも無理な話だ。
 それに・・・早く知らせておきたいことが、いくつかある。

「あー・・・とりあえず、さっきは悪かった」
「もうそれはいい。と言うか、蒸し返すな」

 赤面が強まりそうになるのをどうにか抑えて、話を続けさせる。

「それじゃあ・・・どこか変なところはないか?」
「・・・特にない、な。むしろ、記憶が戻ってようやくベストコンディションになった感じだ」

 その瞬間に、目の前で武双君が息をのむのがなぜか面白かった。
 こんな顔を見るのも・・・

「・・・戻ったんだな、記憶。よかったじゃねえか」
「ああ・・・本当に、良かった。武双君に迷惑をかける前に分かって、本当に」
「ばーか。迷惑に思うわけないだろ」
「そういうことではない。そこじゃ・・・ないんだ」

 そして、(ボク)についての話を始める。

「ボクは・・・私は、神祖だ」

 武双君が何か言う前に、話を続ける。

「前世での名前はナーガラージャ。大地に属する蛇の神・・・」
「それで、ナーシャだったんだな」
「そうだな。全く、そのまんますぎるよ」

 これで、ボクの正体は話した。

「なるほど・・・それで、あの神はナーシャから力を吸い取って、」
「の、ようだな。神祖となることでかなり格は落ちているが、それでも蛇の属性を持っている。いいエネルギー源になるはずだ」
「そして、その関係であの繭の中に・・・」

 なにか吸い取っていたものに心当たりがあるようで、武双君はそう呟いた。
 とはいえ、そんなものはどうでもいいが。

「・・・そういうわけだ。武双君、ボクはここで見捨てて行きたまえ」
「・・・は?」

 武双君の表情がこいつ、何言ってんだ・・・というようなものになったが、ボクは気にせず続ける。

「ボクは神祖・・・カンピオーネを抹殺する最後の王を眠りから起こす立場だ」
「・・・それで?」
「結果的に、君を殺すことになってしまうかもしれない。だから、そうなる前にボクを殺してくれ」
「断る」

 はっきりと断られるのは、想像がついていた。

「ったく、そんなの俺が最後の王に殺されなければいい話だろ。それくらい、大したことじゃねえよ」
「そんな簡単な話ではない。最後の王は・・・それほどの存在なんだ」

 そうだな・・・この神について聞きながら、話せばいいか。

「どうだ、武双君。この神は強かったか?」
「・・・ああ、むちゃくちゃ強い」
「それが最源流の鋼だ。そして、最後の王はその上をいく」
「だからって、殺せない理由にはならないだろ」

 あっさりと言ってくれるな・・・

「気にすんなよ、そんなこと。うちの家訓覚えてるか?神代が守るのは、自らも含んだ神代だ」
「・・・・・・
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