第九十七話
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「・・・色々、おかしくないか?」
ドームの中は、先ほど見えたのとは違う・・・どうにもおかしな空間だった。
予想以上に神秘的な・・・まるで、巫女か何かが神から託宣を受け取る場の様な、そんな印象を受ける。
そんなことを考えながら眺めている間にも何度か壁が鋭くとがり、俺を狙うかのようにしてきたが・・・攻撃されることはなく、元の形に戻って行った。
皆、無茶してなければいいんだけど・・・
「・・・そのためにも、早くナーシャを助けないとな」
決意を新たにして、治癒の霊薬を飲んでから聖槍を構えて前へ進む。
何かいるのではないかと警戒しながら進むが、拍子抜けするほど何にもなくて・・・その先に一つ、繭の様なものを発見した。
手で触れると、少し脈打っているのが分かるそれに、どうしようか少し悩んで・・・聖槍の穂先を、押しつけた。
「狂え、狂気の名のもとに」
今いるドームと同じように、繭も一瞬形を失い・・・俺はつい反射的に、手を突っ込んで中から引っ張り出した。
引っ張り出したそれの頭を膝の上において横たえ、その頬をペチペチと叩く。
「ナーシャ。・・・ナーシャ!」
が、起きる様子がない。
脈や呼吸などを確認してみると、ちゃんと脈はあるし呼吸もしているので・・・あの繭の中で、何かされたのだろう。となると・・・
俺は一つの考えに至り、掌を聖槍で貫いた。
「民よ、甘美なる酒に酔いしでろ!我は酒を持って薬を為し、薬を持って酒とする!今一度命ず。民よ、甘美なる酒に酔いしでろ!」
現れた酒樽に手を突っ込んで、一掬い口に含む。
そのままナーシャの唇に自分のそれを押しつけて直接流し込む。
息はしているし、脈もある。となれば、何か他の要因によるもので間違いないはずだ。
だから、俺が持っている唯一の回復系の権能、医薬の酒を飲ませることにした。
そのまま少し眺めて、二、三度と嚥下しているのを確認してから少し待って・・・
「・・・ケホッ、ケホッ」
咳き込みながら体を起こしたナーシャを、反射的に抱きしめた。
「え、ちょ、武双君!?何で急に抱きついて・・・って、ボク裸じゃないか!?一体どういう、」
「・・・よかった、本当に」
ナーシャが困惑したような声をあげているから、早く離れた方がいいのは分かる。
でも・・・俺は涙を流しながら、少しの間そのままでいた。
◇◆◇◆◇
武双君に借りた服を、袖を折ってどうにか着てから一つ咳払い。着替えが終わったことを知らせる。
まず間違いなく、顔は赤いままだが・・・まあ、仕方ない。あんなことをされて赤面するな、と言うのが
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ