暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜2
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は改めて詳細を問い詰めてきた。それはいい。確かに生きた心地はしなかったが、彼がジュエルシードを欲していないのは分かったし、その上で協力……という表現が適切かは分からないが、ジュエルシードの捜索には積極的に参加してもらえる事も分かった。それは望外の収穫だった。
 問題が生じたのは、今後具体的にどうするかという話をする直前だ。しかも、完全に僕のミスだった。
「落としただと?」
 彼の妹に託そうとしたデバイスを、どこかで落としたらしい。慌てて現場に戻るが、見当たらない。そうこうしているうちに、点々と続く破壊痕を目撃した誰かが通報したらしく、警察がやってきてしまった。そもそも、デバイスの反応が全くない。つまり――
「なのはが拾って帰ったという事か?」
 ぽつりと光が呟いた。遺跡調査中に危険な目にあった事は何度かあるが、この時ほど死を身近に感じた事はない。
「すぐに返してもらってきます!」
 彼らの家は、あの子を置き去りにした場所の近くにあるはず。光の返事も聞かず、僕は慌てて走り出した。そして――今に至る。
 何の事はない。逃げ出したその先でも、化物が待ち構えていた。少し考えれば分かりそうなものだった。何せそこで生活しているのは、あの魔導師の家族なのだから。
『があああああっ! 大人しくしねえと頭から喰っちまうぞおおおお!』
 最後に不気味な――見るからに凶暴そうな『本』が叫んだ。明らかに、デバイスではない。むしろ、本の形をした化物というのが適切だ。
 これを諦めの境地というのだろう。近づいてきた男性――文房具を投げつけてきた人だ――に首根っこを掴まれ、必死でじたばたとしながらも、何かしらの覚悟が決まっていくのを感じる。その頃には、家の中まで連れ込まれてしまった。
「驚いた。本当に人の言葉を話すのね」
『そうだな。妙なフェレットもいたもんだ』
「いや、お前が言うのか……?」
『何だ? 喋る本がそんなに珍しいか?』
「そうだな。喋るネズミと同じくらい珍しいんじゃないか」
『残念だがフェレットはネズミじゃねえ。どっちかっつーと猫だ』
「どっちでもいいよ。そんなの」
 彼の家族と、不気味な本が口々にそんな事を言った。しかも何故だか、平然としている。この世界に魔法技術など存在しないはずなのに。きょとんとしているのは、もう一人の少女――明らかに魔法の才能を持っている妹だけだった。
『それで、相棒はどうした? 殺っちまったか? いや、お前程度に殺られるような奴じゃねえか。ヒャハハハハハ!』
 何が面白いのか、物騒な言葉と共に、不気味な本が笑う。何かを言わなければならないのだが、何を言えばいいのか分からない。
「それで、光はどうしたのかしら?」
 そんな中で、一番温和そうな女性――おそらく母親だろ――が言った。ある種の覚悟を宿した、その
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