魔石の時代
第一章
始まりの夜2
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だちょっと早いだろうからな」
それは、自分自身の不安を誤魔化すための軽口でしかない。そんな事は美由紀も分かっていただろう。そうだね、と緊張に強張った笑みを見せた。
それから先は、二人とも無言で自らの得物を抱え、家を飛び出す。
一見して、街は普段と変わらなかった。それには安堵すべき事かもしれない。さらに言うのであれば、探し人もすぐに見つかった。……少なくとも、なのはだけは。
とりあえず安堵すべき事だろう。光なら、少なくとも自分の身は自分で守れる。だが、幸運だとはとても言えそうになかった。むしろ、事態は俺が思うより遥かに深刻なのかもしれない。何故なら、俺達の姿を認めたなのはは、抱きつき泣きながらこう叫んだのだ。
「光お兄ちゃんがいなくなっちゃった!」
……――
「どう思う?」
号泣するなのはを美由紀と二人で何とか宥め、家に連れて帰ってから。リビングの隅で、恭也は呟いた。
光がいなくなった。それだけを繰り返すなのはから、それこそ一家総出――と言っても、こう言う時に一番頼りになる光がいないが――で、どうにか事情を聞き出す。だが、その内容はどうにも現実離れしすぎていた。
夢でも見たに違いない――少なくとも、普通はそう考えるだろう。だが、幸か不幸か我が家は少々特殊だった。
「言葉を話すフェレットに、正体不明の化け物。それに、何でも願いを叶える宝石か。白昼夢でも見たんだろう……と、言いたいところだが」
腕組みをし、険しい顔をした父さんが呻く。少なくとも、俺達にとって、それを一笑に付す事などとてもできない。何故なら、俺達は本物の魔法使いを知っているからだ。
「あの光が家のすぐ傍とはいえ、なのはを置き去りにするほどだ。あながち嘘ではないだろうな」
どうやら光は、その喋るフェレットとやらと行動を共にしているらしい。そのために、確かに家の傍だったとは言え、そちらを優先すべくなのはを一人置き去りにしたと言うのなら、事態は深刻だった。
「光お兄ちゃん……」
一体どうすればいいのか。嫌な沈黙が広がる中、なのはの嗚咽だけが響く。
「なのは……」
そんな中で、母さんが静かに言った。
「本当は、なのはがもっと大きくなってから話すつもりだったけれど……」
その言葉に不吉な気配でも感じたのか、なのはは泣きやみ、顔を上げた。
「光はね。魔法使いなの」
「魔法使い……」
光の言う魔法使いは、おとぎ話に出てくるような夢のある存在ではない。正義のための人殺しだと、彼は言っていた。何故そう言われるのかという理由も合わせて。
もっとも、それはそれでとても信じがたい話だった。……いや、そうでもないか。少なくとも、理由の半分は理解できる。とても信じがたいのはもう半分の方だ。そんな生き方ができるなど、とても信じられない。
「信じられな
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