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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜2
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娘を巻き込むな」
 黒衣を纏ったその少年――見覚えのない魔法を使うその少年の言葉に、僕は背筋が凍りついた。殺される。逆らったら、間違いなく殺される。彼はそれを躊躇わない。理屈ではなく本能が叫ぶ。
「あ、あなたは……?」
 干からびた喉から、何とか声を絞り出す。この少年は魔導師ではない。彼は明らかに異質だった。静かで底の見えない、深淵のような魔力を感じる。
 彼が何者であれ、自分などがどうにかできるような相手ではなかった。
「見れば分かるだろう? 魔法使い――正義のための人殺しだ」
 その言葉に、僕は驚きを覚えなかった。代わりに息を呑んだのは、傍らにいる少女だ。多分、この少年の妹。とても信じられないが、おそらくは。
「口が聞けるなら答えろ。一体何が目的だ? 何が目的でこの世界に侵入した?」
 彼は自分が他の次元世界から来た魔導師である事を知っている。一体何故。いや、そもそもこの世界には魔法技術などないはずなのに。
 だが、そんな事はどうでもいい。
「危険とは、何の事だ? 返答次第ではここで、まずはお前を排除させてもらう」
 フードの向こうに覗く瞳の、光のない輝き。それはむき出しの刃を思わせた。芸術性など考えもせず、ただ何かを切り裂くためだけに造られた、ナイフのような輝き。
「待ってください!」
 恐怖に突き動かされ、叫ぶ。黙っていたら本当に殺される。それは分かっていた。
「事故、事故でこの世界に撒き散らされてしまったジュエルシードという宝石を探しています! それだけなんです!」
「それがどう危険――」
 言いかけ、彼が突然飛び掛ってきた。心臓がすくみあがり、何もできない。だが、それは正解だっただろう。彼は、僕……というより、その後ろにいた妹に飛びつくと同時に、氷の盾を作り出した。
 そして、その向こう側に何かが激突する。あの思念体だった。確認するまでも無い。
「それがどう危険かは聞くまでもなさそうだな」
 その思念体を一瞥し、彼は不快そうに言った。
「その娘に傷の一つでも負わせて見ろ。生まれた事を後悔させてやる」
 それくらいの事は平気でできそうだった。物騒な言葉を告げると同時、彼は思念体に向けて、あの回転する刃を放った。ただの質量兵器ではない。魔力を帯びたそれは、思念体をあっさりと切り裂き――そして消えた。魔力によって具現化しているらしい。
 苦悶の声を上げながらも、思念体が彼に向かって突進する。だが、無意味だった。
「消えろ」
 彼が告げると同時、巨大な氷柱が思念体を貫く。そのまま凍りついた思念体に向けて、彼は再びあの刃をいくつも叩き込んだ。乱雑に切り刻まれ、思念体の身体が霧散していく。そして、最後に残ったのは青紫の宝石――ジュエルシードだけだった。
「さてと、仕上げといこうか」
 言って、彼は右手を突き
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