魔石の時代
第一章
始まりの夜2
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。私に力を貸して」
≪Yes,My Master≫
6
驚いた。それが素直な感想だった。確かに、この少女に魔法の才能があるのは分かっていた。だが、まさかこれほどとは。
「えっと……。これでいいの?」
白を基本としたバリアジャケットをまとい、黄金のデバイスを握りしめた彼女は、自分の身体を見下ろし、困ったように言った。
彼女が手にしたデバイス――レイジングハートは、インテリジェンスデバイスだ。性能は高いが、使い手を選ぶ。実際、僕にはその性能を引き出す事ができなかった。
しかし、彼女は、初めから自分の物だったと言うかのように、あっさりとその力を引き出して見せた。あるいは、本当にレイジングハートが自ら彼女を主と決めたのかもしれない。そう思わせるに充分な――本当に、破格の才能だった。なるほど、血の繋がりなどなくとも、彼らは確かに兄妹なのだ。思わず納得する。
一方、彼女の家族の反応は二つに分かれていた。
「すっご〜い。アニメみたい」
「そ、そうかな? 変じゃない?」
「大丈夫。可愛いよ」
≪No Problem≫
「あら、この子も話すのね。なのはのこと、お願いね」
≪Yes Mother≫
やはり彼の影響なのか、驚きはない。むしろ思った以上に好意的だった。姉と母の言葉に頬を染める彼女を見て、少しばかり場違いかもしれないが、微笑ましい気分になった。……ほんの一瞬だけ。
「確かに魔法らしい。それに、光のものとは違うようだな」
「ああ。ちょっと安心した。アイツの魔法は何か色々とえげつないからなぁ」
『そりゃ、しかたねえ。何せ相棒の魔法は殺しの手段だからな』
おおよそ好意的な女性陣を他所に、残りの男性陣は口々にそんな事を言った。彼らは何故だか憐れむような目で僕を見る。嫌な予感がした。
『可哀そうに。死んだな、コイツ』
「まぁ、そうかもな。理由は何であれ、光を裏切ってなのはを巻き込んだ訳だし。ついでに言えば、魔法使いとしての光には俺でも勝てるか怪しいからな。父さんは?」
「どうだろうなぁ。そもそも光の本気なんて俺も見た事がない」
彼の父と兄、そして相棒の言葉が嫌でも聞こえてくる。血の気が引く音がした。
『見ないで済むならそれに越したことはねえよ。オレはキレた相棒がこの世で一番怖い』
深々としたため息とともに、リブロムがしみじみと言った。すうっと、意識が遠のくのを感じる。
『まさかまたあの惨劇を見る事になるとはなぁ。コイツも可哀そうに』
闇に落ちる中、僕が最後に聞いたのは、そんな言葉だった。
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