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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜2
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る様にして、病室を後にする。そのつもりで、扉を開けると、
「お話は終わったかしら?」
 もう一人の女――つまり、あの男の妻がいた。
 ああ、邪魔したな――そう返事を返すより先に、その女は言った。
「あなたはこれからどうするつもり?」
 正直に言えばその質問に対する答えを持っていなかった。自分がやらなければならない事ははっきりと思い出した。自分がここに迷い込んだ以上、この世界のどこかに彼女達はいる。それを見つける必要があるが――伝手がないのは事実だった。御神美沙斗と行動を共にしている間、それらしい情報は手に入らなかった。だが、積極的に情報を集めていた訳ではない。見落としていた可能性の方が高い。この世界に魔法はない。それなら、今どこにあったとしても、いずれこちら側に追いやられるはず。ならば、
 相棒を探すべきだ――自分が下した結論はそれだった。御神美沙斗と行動を共にするべきだ。……例え、彼女がそれを望まなくても。自分は彼女の相棒なのだから。だが、
「もしよければ、私達の家に来ない?」
 この女もそんな事を言いだした。今度こそ深刻に思考が止まる。この女が命のやり取りとは無縁の世界で生きてきたのは明らかだ。なのに何故そんなを世迷い言い出すのか。そもそも自分を手元に置いておいて、この二人にどんな利点がある?――全く分からない。取り戻したばかりの記憶は役に立ちそうにもない。裏が読めない。真意が見えない。
 完全に途方に暮れ――それから先の事は、よく覚えていない。
 何か言い訳をしたような記憶があるが、全く内容が思い出せない。おそらく、自分でも記憶できないほど支離滅裂な事を言ったのだろう。
「君を助けて欲しい。妹にそう頼まれているんだ」
 せめて行き先が決るまでの間でも、そうしてくれないか――男が言った。それが、最後のトドメだったように思える。裏も真意も何も分からないまま……いや、
 そもそもそんなものは初めからなかったのだと理解するのは――結局、その二人の家に連れていかれてから……家族と呼ばれるようになってからの事だった。




 それはおそらく潔癖症だったのだ。そして、自分の役割に誇りを持っていたに違いない。だから耐えられなかった。
 自分に向けられる、浅ましい欲望が。自分はそんなもののために存在しているのではないのだと。だから、それは自分たちの創造主たちが滅んだ時、安堵した。あるいは高笑いさえしたかもしれない。
 これでようやく眠れる。薄汚い欲望ばかり叶えるくらいなら、永遠に眠っていた方がずっとマシだ。そうして訪れた安息は、しかし唐突に遮られた。
 そいつのせいで、自分はまた身勝手な欲望ばかり叶えなければならない。それには耐えられなかった。せめてそいつを八つ裂きにしたい。自分にはその権利がある。だが、自分にはそのための手
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