第四章
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第四章
「それでは京都の山奥にいる伝説の剣道家とは」
「私はそうではない」
だが彼女はそれは否定するのだった。
「それはな。私ではない」
「ではそれは一体誰ですか?」
「今は言うことができない」
しかも言おうともしなかった。取り付く島もないといった感じだった。
「残念だがな」
「そうなのですか」
「しかし。手合わせすることはできる」
こう話すのだった。
「手合わせはな」
「はい、それでは」
「手合わせだ」
言いながら礼をしてからそれぞれ防具を着けそうしてそのうえで手合わせに入る。まず構えを取って凌駕は。その言葉の腕がわかったのだった。
「これは」
彼女はただ中段の構えを取っているだけだ。ただそれだけだ。白い防具が如何にも女性らしい。しかしそこから放たれる気は彼よりも上であった。
「どうした?打って来ないのか?」
彼女の方から言ってきたのだった。
「遠慮はいらないぞ。来るがいい」
「くっ・・・・・・」
凌駕もまた中段である。しかしどうしても攻めることはできなかった。そうしてそのまま迂闊に攻めることはできなかった。どうしてもだった。
「攻められない、これは」
「攻めないならばだ」
言葉の方から言ってきたのだった。
「こちらから行くぞ」
「来た!?」
その動きは見えなかった。一瞬だった。彼は面を取られていた。気付いた時には言葉はもう彼の後ろを通り抜けていたのであった。
「何っ・・・・・・」
「一本だな」
通り抜けていた言葉が振り向いて答えてきたのだった。奇麗な面を決めた後での言葉だった。
「これでな」
「馬鹿な、見えなかった」
「一本は一本だ」
また言う言葉だった。
「そうだな」
「はい」
「驚いているな」
今度はこう言ってきた言葉だった。
「私に一本取られて」
「その通りです」
凌駕は項垂れた声でそれを認めるのだった。
「まさか。こんな」
「貴殿は確かに強い」
彼女もそれは認めた。
「そして修行を積んできたな」
「そのつもりです」
謙遜しながら述べる凌駕だった。
「それは」
「構えでわかる。貴殿の腕はやはり世界を制しただけはある」
こうも話すのだった。
「しかし私はより修行を積んできたのだ」
「よりですか」
「そうだ。私はより多くの修行を積んできた」
言葉は己の言葉を続ける。
「貴殿よりな」
「それで俺を」
「どうだ?剣の道をより進みたいか?」
また構えを取ってきて凌駕に問うてきたのだった。
「ならばだ。私と共にこの山寺で修行を積むことだ」
「剣の道を」
この言葉はそのまま彼の心の中に残ったのだった。何故ならそれこそが彼がいつも考えていることだからだ。だからこそ残るのであった。
「どうするのだ?
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