暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外14話『激情晩』
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俺はクロコダイルを倒すというやるべきことをできなかった。でも、完全に何もできなかったわけじゃない。少しは俺がやるべきことをやった。俺にしかできないことを、俺だってやっていたらしい。
 そう思えて、心が一気に軽くなった。
 もしかしたらまだ俺は麦わら一味でいてもいいんじゃないだろうか。
 もしかしたらまだ俺にはナミと一緒にいることを許されるんじゃないだろうか。

「なぁ、ナミ?」
「ん?」
「俺、まだルフィたちの仲間でいいんだよな」
「……当たり前なこと聞かないでよ、バカね」
「……そっか」

 ナミの声が優しく胸に響く。

 ――あぁ、俺はまだここにいていいんだ。

 ホッとしたというかなんというか。

「……」

 俺ももしかしたら疲れていたのかもしれない。
 急激に眠気が押し寄せてきた……けど、あと少しだけ。
 俺を抱きしめてくれているナミを、俺も抱きしめ返す。

「わ」

 急に俺が力が入って、ナミも驚いたらしい。漏れたように聞こえてくるナミの声がくすぐったくて、わけもなく嬉しい。
 俺の血がナミの服にもつくんだろうなとか思いつつも、まぁ最初に俺に密着してきたのはナミからなんだから怒られたりはしないだろう、いややっぱ怒られるか? とかいうどうでもいい思考が浮かんで、それを強引に流す。
 このまま眠ってしまいたいけど、その前にナミに一言伝えたい。

「ありがとな」
「どうしたのよ」
「ナミのおかげで元気出た……だからありがとう」
「……」

 本当に、俺はナミのことを好きになれてよかった。
 容姿があって。でも、可愛いだけじゃない。
 俺みたいな人間を元気づけさせてくれて。でも、優しいだけじゃない。
 Mr1のペアの女の人にも勝って。でも、強いだけじゃない。
 すごい航海術ももってて、でも賢いだけじゃない。

 まだまだ数えきれないほどのいいところがナミにはあって、そんなナミを俺は好きになれた。ナミには先約なる人物がいて、俺はきっとナミの家族としてこの先を過ごすことになる。それでもナミを好きでいたということはきっと俺にとっては誇らしいことで、胸を張れることで、それでいてきっと感謝できることで。
 だから俺はもう一度、礼を言う。
 きっとこの想いは、ただ『励ましてくれてありがとう』という意味でしかナミには伝わらないけど。
 それでも言いたい。

「本当に、ありがとう」 
「…………うん」

 ナミを少しだけ強く抱きしめる。
 そろそろナミから離れた方がいいんだろうか。考えて、けどナミも強く抱きしめ返してくれてるからまだ離さなくてもいいんだと漠然と思った。

「……ねぇ、ハント?」
「……ん?」
「さっき、私のこと好きって言ったわね?」
「……んん?」
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