暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外14話『激情晩』
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めた。
 ……ふざけんな。
 拳を振り下ろした。

「っ゛……ぅ!」

 口の中が熱い。
 それを吐き出す。
 血だった。それが、雨に流れて割れた地面に消えていく。

 ――サンジは勝った。

 あばら骨が何本も逝っていたのに。
 けど、俺は腹に傷を負ったくらいで諦めた。
 …………ふざけんな。
 拳を振り下ろした。

「う゛」

 座っているのに、それでも体がクの字に曲がる。
 腹からの血が広がって、口からも血がたくさん漏れる。
 やめろ。これ以上は本当に死ぬぞ。
 俺の中の理性が告げる。けど、本能が強く言う。

『死んだ方がましだ』

 ……あぁ、俺もそう思う。麦わらの一味として、俺は不適格すぎる。俺が好きなナミも誰か俺じゃない男を好きなんだから、死んだって誰が困るというんだろうか。
 だから、また思う。

 ――ウソップとチョッパーは勝った。

 ウソップは頭蓋骨にひびが入って、チョッパーも医者なのに体中を血だらけにして。
 けど、俺は腹に傷を負ったくらいで諦めた。
 ………………ふざけんな。
 拳を振り下ろした。

「……!」

 腹の何かが裂けた音がした。
 大量の血が腹が出た。口からはまるで嘔吐しているかのように血がこぼれる。
 けど、止まれない。
 だって、ナミも戦ってしかも勝ったんだから。

 ――足に大けがを負っていた……下手をすればナミだって死んでいたんだ。

 俺が守るって誓ったナミは、ウソップに武器を作ってもらって、その武器で、一人で敵を倒していた。多分ナミらしい頭脳的な戦い方で勝ったんだろう。
 俺が守ると誓ったナミでさえ敵を倒してというのに、俺は一体何をしたんだろうか。
 何もしていない。
 俺が誰よりも守りたいはずのナミも、ビビのために一人で戦って勝利を得た。
 けど、俺は腹に傷を負ったくらいで諦めた。
 そんなことがあっていいはずがない。 
 ……ふざけんな。
 拳を振り下ろした。

「……ぐっ」

 痛い。
 たった数発こづいただけなのに。
 俺の軟弱さを思って、やっぱりムカつく。
 腹を殴る。

「……っ゛」

 吐血。
 目がチカチカしてきた。

 ――知るか。

 殴る。

「う゛」

 また吐血。
 力が入らなくなってきた。

 ――だからなんだ。

 殴る。
 ただひたすらに殴る。
 殴る殴る殴る殴る殴る殴――

「――何やってんのよ! 死ぬ気!?」

 誰だ?
 俺の腕を掴んだ人間に視線を送る。

「……?」

 視界がチカチカしていて誰だかよくわからなかったけど、目を凝らすと見えた。

「……ナミ?」
「何やってんのよ!?」


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