アカデミー編
運命
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たものなのだろう。
カトナの幸せはきっと、誰の目から見ても確実に異常だ。
カトナがナルトの為に尽くすことは、カトナの幸せではない。
ナルトの幸せ=カトナの幸せではないのだ。
なのにカトナは、それこそが幸せだと思う。
大切な人が生きていて、一番大事な人が笑っていて、それがカトナの幸せなのだ。
最上級の幸せではないが、ナルトが傷ついてしまった今の状態であるが、それでも幸せではある。
そのカトナの笑顔に、ネジは何も言えなくなって下を向いた。
・・・
「カトナは、もっと幸せになるべきなんだってば」
『………そうだな』
赤い赤い部屋の中、自分と九尾しか存在しないその空間の中で、ナルトは突然、そう切り出した。
「いつだって、俺を守らなきゃ守らなきゃって思って、俺を守ることに必死で、俺が笑ってれば自分が幸せだっていうけど、そんなわけないんだってば」
『仕方ないだろう。奴にはもう、お前を守るしか選択肢がないんだ』
九尾はそういって、あの日を思い出す。
慟哭した少女の、小さく丸まった背と力なく落とされた肩が脳裏をよぎる。
――ごめん、ごめ、ん、ごめん、ごめんな、さっ、ごめんなさい、ごめん、ごめ、ん
何度も何度も謝って、苦しんで。それでも最後には、正しい選択をするしかなかった少女。忍びとして生きていくことを定めた女。
血を浴び、美しい髪の毛を黒いもので汚した彼女の真っ赤な目が瞼の裏で煌めいた。
あの日に、彼らは大切なものを失った。
うちはサスケも、うずまきナルトも、うずまきカトナも、あの日に壊れてしまった。
もう二度と彼らはあの日に失くした大切なものを、取り戻すことはできない。
一度、赤く染まった手のひらを、もう二度と真っ白にすることが出来ないように。
彼は人を殺し、彼女もまた人を殺し。そしてナルトは、傷を負った。
「…なぁ、クラマ。やっぱこれ、なおせねぇってば?」
ナルトが着物の上からポンポンと自分の体を叩いた。
一瞬、怒ったように顔をしかめた後、九尾はふんっと顔をそむける。
その様子に、クラマを傷つけてしまったとナルトが慌てて謝る。
「わるい…」
『…何故、お前が謝る』
「だって、お前を傷つけたってば」
その言葉に苛々としながら、九尾は尾で床を叩いた。
ばんばんと激しい音が部屋中に響く。
傷つけられてなど、いないのだ。
自分の身は傷つけられてなどいない。傷つけられたのは、目の前にいる彼だ。
彼は彼の姉はもっと幸せになるべきだと言うが、それは彼にも当てはまると、九尾は舌を噛んだ。
気が遠くなるほど長い時を、生きてきたのに。なのに自分は、目の前の子どもの傷を癒すことさえ出来ないのだ。
こんな
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