アカデミー編
運命
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筈だったのだろう。
いや、違う。
ナルトはサスケやイタチが居る限り、きっと、世界で一番の不幸は味わなかった。
けれどそれでも、あの悪意にはさらされてはいたのだろう。
傷ついて、泣くこともあったのだろう。痛いと、独りで苦しみを耐えることもあったのだろう。
それを想像して、ああ、自分がここに居てよかったと、この時ばかりは、カトナは心の底から思うのだ。
自分が生きていて、本当によかったと、そう思うのだ。
「誰かが、運命を、肩代わりすることは、できる、よ」
不意打ちじみた言葉に、ネジは顔をしかめた。けれども、先ほどの答えの続きなのだと気が付いて、少しだけ困ったような顔をする。
肩代わりが、一体どこの誰のことを指すのか、ネジには分からない。
ただそれは、カトナが誰かの運命を肩代わりしたのだという事で。カトナが、自ら不幸になることを望んだという事で。
「お前は幸せなのか、カトナ」
ネジはどこか、祈るような気持ちで聞いた。
幸せだと言わないでくれと、身代わりになった運命を喜ばないでくれと、心の底から祈った。
それを受けてカトナは、どうこたえようかと、一瞬だけ迷った。
カトナの世界は、たくさんの悪意で囲まれているけれど、それ以上の優しさでいっぱいだった。
勉強を教えてくれるのはイタチで、世界を変えてくれるのはサスケで。そして、すべてを構成するのはナルトだった。
カトナにとっての世界は、神様に作られたのではなく、世界の中心は神様ではなく、ナルトによって作られて、ナルトによって生かされている。
神様なんて、そんな、いるかどうかも分からない存在で作られているのではない。
確かにここに居て、笑って、自分を大好きだと言ってくれる存在が、自分の運命を左右してくれるのだ。
そして、こんな自分を好いてくれる人が、確かにここに居るのだ。
一人はこの里を抜けてしまったけど、もう一人はまだここに居てくれている。
大好きな人。大切な人。
カトナは彼がいない世界では、生きてはいけない。
それに、新しくネジという友達が出来た。
自分という存在が嫌われることで、自分の大切な人を守ることが出来ている。
あの人たちとの約束を守ることができて、あの人たちの自慢の子でいることができて、あの人たちの家族であることができる。
これ以上の幸せなんて、あるのだろうか。
「幸せ、だよ」
本当にうれしそうな笑みだった。
ふわりと、花が綻んだような柔らかな笑顔は、本当に幸せに見えた。
けれど、彼女が言っていることは間違いなく、どこが可笑しかった。
カトナのそれは、きっと、本当に幸せな人たちから見れば、まがい物の幸福なのだろう。本当の幸福ではなく、偽物の、どこか間違ってしまっ
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