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しろ
しもべとご主人様2
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一年ほど前の話だ。あの日もこんな風にやたらと暑かった。俺は気がつけば小さな公園のブランコに腰かけて、ぼーっとしていた。
何も覚えていなかった。自分の名前も、自分が何者なのかも。帰るところも分からなかったから、ずっとそこに座っていた。
砂場で遊んでいる子供が俺を指さして何か言っていた。すぐにその子の母親が駆け寄ってきて、そそくさと子供を連れてどこかへいなくなった。
俺は自分の格好を見て、ああ確かに普通じゃないと思った。上半身は裸で、下はウエストのゆるいジーンズのみ。腰のあたりまで伸びた髪は何故かすべて白くて、前髪も顔を覆うくらいに伸びているから少し邪魔だ。

「綺麗な髪だな」

急に、女の子の声がした。顔を上げると、小さな女の子が笑っていた。

背負った赤いランドセルからは、さまざまなうさぎのキーホルダーがいくつもぶらさがっている。

「それはあれか?脱色したのか」
「…わからない」

女の子は俺の隣のブランコに座った。彼女が小さな足を前後させると、ゆっくりとブランコは動き出した。

「なら、地毛か?」
「…わからない」

ブランコの振り幅はあっというまに大きくなった。その一番高いところで、少女は飛び降りた。

「おっ…おい、あぶな」
「なんだ、わからない、以外も喋るじゃないか」

少女は美しい着地を見せると俺に向き直った。
仁王立ちで、腕を組み、見るからに自信に満ち溢れている。俺とは大違いだ。

「私のは地毛だ。見ろ。かっこいい赤毛だろ」
「……はぁ…そう、だね」
「ふふ。そうだろう。カットも自分でやってるんだ」
「えっ」

眉毛の上で、まっすぐ切りそろえられた紅い髪。後ろは短く、ざんばらのバサバサだ。自分で切ったせいなのか。
女の子にそんなことを強いるなんて、どんだけ貧乏な家住んでるんだろう、この子。
俺は、自分のことを棚に上げつつ、彼女が少し心配になってきた。

「お前、捨てられたんだろ」
「えっ?」
「ふふ、私にはわかるぞ。私の父上も、母上に捨てられたからな!」
「……」
「どうだ、お前、行くところがないなら私が拾ってやろう。ちょうどシモベが欲しかったんだ」
「…よせよ」

俺は立ち上がり、ブランコから離れた。

「気持ちはうれしいけど。俺、自分のこともよく分からないし…名前もわかんないんだ。それに知らない人連れて帰るなんてしたら、お父さんに叱られるよ。知らない人食わせてくなんて、あほらしいしさ。君の家、そんなお金持ちじゃないでしょ」
「ふん、なめるな」
「はい?」
「私はべにこ。稲葉べにこだ。捨て犬といえど、稲葉家の名くらい聞いたことあるだろう」
「い、いや…悪いけど知らな」
「このフシミに住んでいてイナバシンジケートを知らないわけないだろう。今や
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