しもべとご主人様
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停止した硝子の城は、夏の空にぽっかりと浮かんでいた。
強い日差しが真上から照り付ける。白い砂浜からも反射して、ものすごい暑さだ。じりじり肌が焼けているのが実感できる。こんな日はあまり外出したくないたちなので、結構きついものがある。
しかしそれにしても、海鳥の鳴き声、引いては寄せる波の音が、耳に気持ちいい。「彼女」に引きずられてやってきたが、たまにはこんな日に外に出るのもいいかもしれない。ああ、この両手の荷物がなければ…あとできれば大きめの日蔭があれば…
と、自分の前を行く小さな足が、ぴたりと止まった。
「あっ…おい見ろシモベ!あれが噂の天空の城だ!」
少女の興奮した声に、顔を上げた。
水平線の向こうから広がる入道雲。その白の中に、透明な…硝子のような何かが浮かんでいる。目を凝らす。
それは、城だった。絵本なんかで見るような、あのお城だ。かなり離れたここからでも、相当な大きさであろうことが分かる。
「うわ、ほんとだ。でっかいスね」
「ヒャッホオー!」
「彼女」は、俺の返事など全く聞かず、砂を蹴りながら海のほうへ走って行った。
潮風に乗って、パーカーやらショートパンツやらが飛んでくる。驚いて見ると、「彼女」はすでに水着姿に変わっていた。服の下に穿いていたらしい。
「ちょ、ちょっとー!?」
脱ぎ捨てられた衣類を拾いながら、慌てて追いかける。
「海に入るんなら準備体操しないとあぶなっ」
次の瞬間、俺は砂浜に叩き付けられていた。
慣れないビーチサンダルに、足がもつれたのだ。転んだ拍子に、両手をふさいでいた荷物も放り投げてしまった。どうせすぐ食べるからと、手提げバッグの上の方に配置しておいた弁当の中身が、見るも無残に砂の上に散らばっていた。
「ひ、昼のお弁当がぁー!!」
咄嗟に顔を上げ、「彼女」の姿を確認した。海を目の前に、屈伸をしている。大丈夫だ、ばれていない。俺はいそいでぶちまけた荷物を回収し、砂にまみれた具を弁当箱に戻した。
ミスをしたとばれたら、どんなお仕置きをされるか分からない。俺は、「彼女」の僕なのだ。
(まっまずいぞ…なにか食糧を調達しなければ…昼飯抜きなどと告げれば、城どころでなく確実にヘソを曲げる)
あたりを見回すと、ほったて小屋のような建物を見つけた。海の家、とかかれた看板がある。
(助かったっ!)
少女が浮き輪を膨らまし始めたのを確認して、俺は海の家へ走った。
「あの…すみまっせーん。誰かいますかぁ」
ガラリとした店内。人は見当たらない。かき氷機もレジもないし、少し不安になってきた。
「いらっしゃいませ」
「うわぁっ!」
振り返ると、びしょびしょに濡れた男の人が立っていた。右手にはモリ、左手にはなにか生き物のの入っ
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