第W章 月華の叫び
第024弾「命の代償」
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2006年5月 13歳
体が動かない―――俺から“大切な者”を奪った鵺を、引き裂き、絶望を与え、嬲り殺してやりたいのに、体は重圧に逆らえず、無様に地面に這いつくばっている。
「ん?この程度で壊れたじょか?」
「―――、――、―――」
鵺は、言葉にならない声を発する俺を見下し、せせら笑う。 自身の内から何かが、折れた音が聞こえた。
「ま、いいっじょ。―――このまま死ね」
あぁ―――もう、無理だ....十分だ。 出来る事はした、もう――――このまま。
このまま。
このまま。
このまま。
このまま――――母すら救えず、大切な者を犠牲にしたまま、無様に―――
“あ、あ――あ”
駄目だ――死ぬ事はできない。 リサの死を無駄にして、生きるのを諦める事なんて、俺にはできない。
最後の最後まで“一緒に居れて幸せだった”なんて、言う大馬鹿の命を、俺なんかの為に...無駄にする事はできない―――!!
敵が近づいて来る。 無防備な俺を殺そうと、切り裂かれた腕の傷を覆ってやってくる。
手足は動かない、なら。 もう一つの手足を動かせ。 重圧など、手足を動かせない理由になど、なりはし無いのだから――!!
――――ギチギチギチ
無理矢理、手足を動かそうとして、悲鳴が上がる。 それはきっと、脳からの最終警告なのだろう―――だが、こんな所で止まる訳にはいかない。
「オオオオぉおおおおーーーー!!!!」
体内でナニカが明確に、破壊された。
――――ゴォッッッ!!!!
周りの瓦礫が中を舞い、力のリミッターが弾け飛ぶ。 それは、都合の良い“進化や覚醒”などではなく、ただの暴走。 不出来な能力者が起こす、力の発露。
―――だが、今はこれで十分だ。 今の衝撃で、鵺の術式に亀裂が入った。 そう、それだけで良い。 身体が多少でも動けば、殺す事ができる―――!! ナイフで、術式の死点を突き刺す。 たった、それだけで身体に自由が戻り、戦闘行動が可能となる。
「ッチ、能力の暴走なんて面倒を起こすなっじょ!!」
鵺は、片手に溜まっていた式力を、何の細工もせず力任せに叩きつけた。 ―――が、そんな物を鈍速で叩きつけられたところで、無意味だ。 力は、銃弾に射抜かれ消失する。
「びょおおおおぉぉぉぉ!!!」
そんな事は、分かりきっている。 そう言う様に、鵺は右眼に緋色の光を帯させ、『緋箍來』―――超音速のメーザーを放つ。
「もう――それは効かない」
が―――それは、音すらなく一本のナイフによって、殺害された。
「びょお!?」
驚いている鵺を無視し、手榴弾のピンを抜く。
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