第四章
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第四章
「飛べるさ。まあ見てな」
「それでここに人が乗るんだよね」
「そうさ」
それもだと答えるのだった。
「まあ見てろって。凄いのになるからな」
「本当に飛んだらあたしのへそくりで上方の羊羹でも買ってあげようかね」
「何っ、上方の!?」
上方と聞いて藤吉は思わず声をあげてしまった。この時代羊羹は中々贅沢な菓子であった。しかもそれが上方からのものとなると余計にだった。江戸時代は確かに幕府は江戸にあったがそれでも文化、食も含めてその中心は上方、即ち関西だったのである。
「それを俺にかい」
「そうだよ。その時はね」
あらためて答えるお鮎だった。
「あくまでその時はだよ。人を乗せて飛べたらね」
「じゃあ早速羊羹買う用意しておきな」
彼はもう成功したつもりだった。
「そのへそくりでな」
「まあそういうふうに話はしておくよ」
「おうよ。しかしよ」
ここで彼はふとまた言ってきたのだった。
「それはそうよよお鮎よ」
「今度は何だい?」
「おめえ何時の間にへそくりなんて持っていたんだ?」
いぶかしむ顔でこう尋ねるのだった。
「何時の間によ。そんなの作ってたんだよ」
「そんなのはね、いつでも作れるんだよ」
しかしお鮎は亭主のその問いににこりと笑って返すのだった。
「そんなのはね」
「何でい、全然大したことじゃねえみてえだな」
「何言ってんだよ、女房ともなりゃね」
そして今度は女房としての言葉を出すのだった。
「普通にへそくりの二つや三つはだよ」
「作ってるっていうのかよ」
「そうだよ、そんなの朝飯前だよ」
こう亭主に言うのだった。
「二つや三つはね」
「そんなの全然気付かなかったけれどよ」
「お金を持ってるのはあたしだよ」
今度はその胸を反らせての言葉であった。
「そんなの何時でもできるってもんさ」
「ちいせえ頃はそんなふうには全然見えなかったってのによ」
藤吉はぼやくようにして述べた。実は二人は幼馴染みでもあるのだ。この時代はそのまま結婚するということも結構あったのである。
「今じゃ立派に女房になりやがって」
「女は十八になって花になって二十五で狐になるんだよ」
「狐かよ」
「それから四十になって狸、六十で狢だよ。覚えておきな」
「ったくよ、変われば変わるもんだぜ」
藤吉はこの時はぼやくことしきりであった。しかしそのぼやきはそのままにして凧を外に出した。そうして本当に広い場所に出て人を集めて。そのうえでまずは凧を飛ばしたのだった。
「おいおい、本当に飛んだよ」
「嘘だろおい」
藤吉に言われて実際に凧をあげた人達が驚きの声をあげた。
「あんなばかでかい凧が飛ぶかよ」
「あんなに簡単によ」
「よし、俺の思った通りだ」
藤吉はこの時凧をあげ
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