第一話 三
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った。
ただ、ありすをじっと見つめる。
ありすを見つめる彼の、その目はどこか悲しげに見えた。
夜が明けて、次の日。
ありすはナナシと一緒に、沢山の車が積み上げられている道路を歩いていた。
車の中には白骨化している人間の死体が乗っていたり、違う車には小動物が巣を作っていたりしている。
ありすはナナシと手を繋ぎながら一つの車に注目して、ナナシから手を離してその注目していた車へ近づいた。
彼女が近づいた窓ガラスから見える車の中には、人間の干からびたスーツを着ている男性の死体の隣にボロボロになっている小さなうさぎの人形が置かれており、ありすはそれを嬉しそうにナナシへ指を刺して言う。
「みてみて、ナナシ! うさぎさんのおにんぎょうだよー! すごくかわいい!」
ナナシはありすが何に喜んでいるかさっぱり分からない。
だけど、彼は自分が呼ばれているので彼女の下へと歩いた。
そして、彼女に促されるまま、窓ガラスをじっと見た。
その時……
突然、車の扉が開き、死体が倒れこむ。
「きゃっ!」
ありすは悲鳴を上げると、すぐにナナシの後ろへ隠れた。
ナナシは倒れた死体をボーッとした目で観察し、死体がピクリっと動いたのを確認した。
死体はゆっくりと身じろぎをし、それから両手をついて、立ち上がろうとする。
だが、こけた。
ありすは最初、いきなり倒れ込んだ事に驚いたが、死体が起き上がろうと必死に格闘する姿を見て安堵する。
「びっくりしたぁ…… いきなりおどろかさないでよぞんびさん!」
ようやく、死体のぞんびさんは立ち上がると、蛆が出入りしている窪んだ眼窩で一瞬ありすを見る。
そして、彼女から目を離すと、そのままのんびりとした速度でどこかへと向かって歩きだした。
「パパにきいたおはなしだと、ぞんびさんってむかしえいがっていうのでひとをおそってたんだって! ちょっとこわいけど、こんなにのんびりやさんでなにもしないのに…… ねぇ、しんじられる?」
ありすはきゃっきゃ笑いながらナナシに語りかける。彼は取り敢えず頷いた。
この世界のゾンビと呼ばれる歩く死体。この現象は、デセスポワールに殺された者のみが起こる、人間の成れの果てだ。
ただ、何を求める事もなく、何かをする事もなく歩き続ける。
何故ただの死体が歩けるようになったのか? それは、未だに人間の研究では解明されていない。
「あ、そういえばうさぎさんどうしよう? あのぞんびさんがいなくなっちゃったし、さびしいよね? いっしょにつれていっていいかな?」
彼女はゾンビの居た車からうさぎの人形を取ると、それを抱き抱えて彼の下へ戻った。
若干、血がこびり付いている人形に、ありすは少
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