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絶望と人を喰らう者
第一話 二
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「うん、わたしのおなまえ。ねぇ、おにいちゃん」

 少年はぼそぼそっと何度も「ゆめみありす」っと呟くと、ありすという少女に自分の事を呼ばれて、じっと彼女を見つめた。

「あのぅ、おにいちゃんにはおなまえがないのよね? じゃあ、わたしがおなまえつけてあげるー! ね、ね、いいでしょ?」

 少年は少女が何故自分に名前を付けるのだろう? っという風に不思議そうなものを見る目で少女を見る。
 でも、何故か分からないが、名前を付けられる事に不快感は感じず、むしろ心地良い感じがした。
 その気持ちがなんなのかは全く分からないが……
 少年は取り敢えずそのことは置いておいて、こくりと頷いた。

「えっと、じゃあおにいちゃんのなまえはナナシおにいちゃんね! おなまえがないからナナシ!」

 こうして、名前が今まで無かった化物の少年にナナシという名前が付く事になった。

「えへへ、よろしくね!」

 ☆

 まだ年端のいかない少女、ゆめみありすによって名付けられた少年ナナシは、少女を連れて(というより、勝手に付いてきた)荒廃した都市を歩いていた。
 ビルに掲げられている錆び付いている大きな看板はすっかり汚れきっており、文字も読めない程傷んでいる。
 ナナシの近くにあるコンビニらしき建物は中が全くもぬけの殻で、散らかりまくっていた。
 地面や他の建物に、植物が生えており、昔は人間が闊歩していた道路を今では鹿や小動物達が元気良く走り回っている。
 人類が文明の発展を望んで環境を破壊していったが、今ではすっかり人類はありすとナナシが最近出会った男以外見かけておらず、環境を破壊する者が居なくなったのが貢献したのか、徐々に人類の文明である昔は煌びやかであったであろう建物等から自然が生まれていた。

「わー、みてみてナナシ! しかさんだよー!」

「うん」

「かわいいね!」

「かわいい?」

「うん、とってもかわいいよー!」

 出会った頃はすごく怯えていたありすはすっかりナナシに気を許したのか、一八〇度ぐらい性格が変わり、元気で無邪気な姿を何度もナナシに見せていた。
 ナナシはありすの言葉にその度に問い返したり、頷いて返答をしていた。

 今現在、ナナシは自分が見逃した男の方角へ向けて足を進めている。
 目的なんてものは無い。
 ただ、ありすを連れて彷徨っているだけだ。

「ねぇ、ナナシおにいちゃん」

「ん?」

「パパ……どこいっちゃったんだろう。ずっとさがしてたけどどこにもいないの」

「パパ?」

「うん、パパ…… どこ?」

 ありすは先程までの元気が良かった姿から再び変わり、今度は泣き出しそうにしている。
 ナナシはころころと表情の変わるありすをじっと見る
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