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シルエットライフ
いたたまれない高校生の話
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れるという開放感のせいだろうか。

普段なら、そのまま階段を下りて、走って家へと帰るだろう。
だがその時は、僕自身でも分からないが、B棟へと向かっていった。
引き寄せられるようにして足が動くもので、僕は自分に対して言い訳をした。
安全を確認しよう。

B棟の屋上前の踊り場は、普段は絶好の隠れ場として機能してくれるが、放課後は榊原達の溜まり場となる。
だから、そこに榊原達がいれば、そこ以外の場所は安全という訳だ。
流石に榊原達が何人もいたら、僕は死んでしまうだろう。精神的に。

それに、榊原達はいつも三人組でいる。
彼らの内の一人しかいない、という状況はまずないだろう。

彼らの中心は榊原だから、榊原がいないと、島津も井岡も激しい暴力や嫌がらせはしてこない。
榊原も、何故か単独だと、僕に危害を加える様子はない。
それどころか、たまに気持ち悪いくらいに親切な一面を見せる。
この前は、島津達に無理やり奪われた財布を返してもらった。中身を確認したものの、一円も減っておらず、嬉しさよりも不気味さを覚えた。

しかし、不思議な奴らだ。何故力を持っているのに、他の男子生徒からも慕われているのに、魅力があって女子から好意を持たれていたりもするのに、
身を寄せ合って何かから身を護るように動くのだろうか。

B棟に辿り着いたが、まだ榊原達は見かけていない。
奥の階段へと向かう。あの階段を上っていけば、屋上前の踊り場だ。

無人の廊下は静かで、心地良い。
そこには善意も悪意もなく、清らかな雰囲気すらある。
無、と言えばいいのだろうか。

廊下の中間あたりまで歩いたところで、立ち止まった。
どこかから、人の声が聞こえるのだ。
男性の声だ。何かに悶えるような、呻き声が聞こえる。
誰かが怪我をしているのかもしれない。
階段から落ちたりでもしたのだろうか?

慌てて走り出した。体の痛みは、嘘のように綺麗さっぱりなくなっていた。
階段に足をかけ、そのまま力を入れ、跳ねる。
二段飛ばして、階段を駆け上がる。息切れも感じない。数時間前にあんなに酷い目に遭った筈なのに、体調は絶好調だ。

階段の踊り場に出ると、信じられない光景が目に飛び込んできた。
男子生徒が、隅で蹲っている。暗い空間の中で、目を白黒させていた。

声をかけようとして、はっとした。
男子生徒の足元を見る。

長い、小指が転がっていた。













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