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シルエットライフ
いたたまれない高校生の話
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きゃっきゃっとはしゃぎながら、島津と井岡が、足を振り上げた。













放課後のチャイムは、まるで地中に生き埋めにされた人間を救助する消防士の叫び声のように感じられた。
もういいぞ、帰っていいんだぞ。逃げていいんだぞ。
学級委員の号令に従って、教師に向かって、正確にはただ前に向かって軽く頭を下げる。
その動作だけでも、体中が痛んだ。中学の頃にやっていた、サッカー部を思い出す。
初日、僕は体がほとんど動かなかった。足は石のように重くなり、胃は空っぽで、家に帰ることすら必死だった。
今も、そうだ。腹を抑え、足を引きずり、廊下の壁に手をつきながら、歩いていた。

廊下は笑顔でしゃべりながら歩く生徒達と、部活動のために校内に残る生徒達で賑わっていた。

周りは楽しそうに、放課後の予定を話し合い、どこそこに遊びに行こう、などと暢気に言っている。
三人組の女子生徒の視線が、こちらに向いているのに気づいた。
冷たい、侮蔑と好奇の目だ。会話が聞こえてくる。

「なにあれ、気持ち悪い」

「ねえ、ほっとこうよ」

「そうそう、あんなブス、関わるだけ無駄だって。ほら、こっち見てるよ」

ブスとはなんだ、ブスとは。男に言うなら不細工だ。というより、お前らだってゲームに出てくるモンスターのような顔をしてるじゃないか。
それになんだ、お前ら、そんなにお前らは偉いのか。
僕はお前らに対して、何かしたというのか。何もしていない相手を見下して、指を差す権利がお前らのどこにある。

精神の弦が激しく揺れる。
胸の内から、どろどろとした、熱い何かが沸き立つのを感じた。
その熱が足へ、手へと伝わる。握り拳を作り、歯を噛み締め、足に力を入れる。
怒りのエンジンが震えだす。

今にも走り出し、あの女子生徒達に殴りかかりたいという衝動に駆られる。
しかし、女子生徒達を睨んだ直後、全身を激痛が走った。身を捩る。

女子生徒達が猿のような甲高い悲鳴を上げる。
ちくしょう、これでまた、変な噂が流れる。悔し涙が出そうになった。
もうやめろ。やめてくれ。僕をこれ以上見下さないでくれ。

気付くと、頬が濡れていた。涙が流れていた。
慌てて俯き、そして急ぎ足で、女子生徒達の横を通り過ぎる。
こんなことを、あと一年近く繰り返さないといけないのか。

心の中で、悲嘆の叫びを上げる僕がいた。
のたうち回り、無様に許しを請う僕の声が聞こえてくる。
何かを振り切ろうとするかのように、痛みを堪えて走り出した。












不幸中の幸いとでも言うべきか、教室から出てから一度も、榊原達には出くわさずに済んだ。
階段に近づくと、不思議と痛みも和らいだ。なんだろう、帰
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