いたたまれない高校生の話
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かった。
悔しさを源泉として、更に涙が出てきそうになるのを、必死にこらえる。
榊原も、この二人も、僕のクラスメイトだ。
名前は、幼い少年の面影を残した顔で、男にしては長い髪を揺らしている方が井岡彰俊。
短髪でスポーツマンのような体系をしている方が島津祥吾だ。
井岡は美少年というわけではなく、どちらかというと島津の方が顔が全体的に引き締まっており、目鼻立ちなどは整っているのだが、何故か井岡の方が女子に人気がある。
島津はまるで狼や豹といった肉食獣のような、暴力的な雰囲気を発散させていた。
どちらも頭部の骨格は小さく、髪は整髪料でも使っているのか、トイレの照明の光を白く反射している。
そして、二人とも、笑っていた。
きっと楽しいのだろう。
「よお、後藤、こんなところで何してるんだよ」
「小便に決まってるじゃんか」
「小便以外にも、色々とすることあるだろ」
「そうだよ、俺達がやったあれ、どうしたんだよ」
「吸わなきゃだめだって言っただろ」榊原が首を回す。ごきごきと骨が鳴る音が聞こえる。
榊原の横で腕を組んでいた島津が、近づいてきた。つられて、井岡も足を踏み出す。
島津が倒れたままの僕の横に座り込んで、制服のズボンのポケットを漁り始めた。
井岡は汚い物にでも触るかのように、脚で僕の服を突っついて、何かを探している。
「お、あった」
島津が、僕のズボンのポケットから、長方形の箱と、真鍮色のライターを取りだした。
煙草の箱だ。無機質なデザインで、赤い色をしている。
「なあ、なんで吸ってないんだよ」
「す、吸ったよ、見てみろよ、一本減ってるだろ」
「島津、そのライター、開けてみ」
言われた通りに、島津がライターの蓋を開ける。
首を回し、島津の方を見る。ライターから、何かを剥がしている。
「俺がそのライターを貸した時、使ったら分かるように、セロハンテープを貼って置いたんだよ。
吸ったなら、剥がしてあるだろ? それがどうして剥がれてないんだよ」
「何か意味があるんだろうと思って、張り直したんだ」
「嘘つくなよ、一回も剥がした形跡がないじゃねえか」
そっちこそ、嘘をつくな。
剥がした剥がしてないなんて、どうせ見分けもつかないくせに。
起き上がろうとすると、榊原が歩み寄ってきて、背中を思い切り踏みつけられた。
トイレの床と自分の身体がぴったりと密着する。圧迫されて、息ができない。
「それじゃ、約束は約束だ。時間は休み時間が終わるまで。はい、始め」
榊原が号令を下す。
ああ、いやだ。僕はこの後、こいつらにされる仕打ちを知っている。
体が、服が、物が、魂が、尊厳が、破壊されていく。
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