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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
 最終話 勇は眠り、天は泣く 
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「そうきたか」


相馬は素早く反応して勇人の左手にナイフを振おうとする。


「かかったな!」


勇人は左手での攻撃を中止し、相馬の首に目掛けてナイフを右から左へ振る。
しかし、相馬は攻撃を中断して自身の首に迫ってきているナイフを自身のナイフで受け止める。



ガキィン!!



勇人のナイフと相馬のナイフが衝突し、鍔迫り合いの状態になる。


刃と刃のぶつかり合い。
勇人の額に汗が浮かび、徐々に押され始める。


(このままじゃ……押し負ける!!)


勇人は鍔迫り合いの状態を維持しながら、相馬の目を潰そうと左手を突きだす。
対する相馬は、自分の顔に向かってくる勇人の左手を掴む。
勇人の左手を掴んだ相馬は、すぐに勇人の左手を捻じる。


「くっ!」


勇人はナイフを握る指の力を弱める。


キンッ!


勇人のナイフは中を浮いた。


「何!」

「はあ!!」


勇人は懐からもう1本ナイフを取り出し、自分の左手を掴んでいる相馬の左手に突き刺す。


「ぐう!」


相馬が怯み、相馬の左手の力が弱まった瞬間、勇人は左手を引き戻す。
そして、すかさず下段蹴りを相馬の右足に放つ。


「ぬう!! だが、甘い!!」


相馬は痛みに耐え、そのまま勇人の胸へナイフを突きだす。
 



(しまっ――)








ザシュッ!!







「ぐう!?」



相馬のナイフが、勇人の胸に突き刺さる。




血が勇人の服を赤く染める。


だんだん視界が暗くなっていく……。


(くそ……ここ……まで……なのか? 結局僕は……皆を守れずに……)


意識が遠のいて行く中……うっすらと何かが見えてくる。


(これは……?)


(なんで……急に……皆の顔が浮かんで……ああ……これが……走馬灯ってやつか……)






足から力が抜け、勇人は倒れそうになる。



「…………」




『どうしたでござるか? 天原殿』





『何か悩み事なりや? 相談にのるなりよ』





『出会い頭にとんでもないことを聞くんだな……』





『ちょっとあんた!! 聞きたいことがあるんだから勝手にくたばんないでよ!!』





『あ、理子のこと知ってるんだぁー。キミ、理子のファンだなー?』





『全く、いつもお前らは騒がしいな』





『天原勇人……』





『天原様……自首するなら今の内ですわよ……』

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