第三章
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
」
「会えないんだな」
「見られるだけなんてな。空しいものだぜ」
牧人は寂しい笑顔を浮かべた。
「手が届かないんだからな。どうしても」
「どうしてもか」
「けれどな」
だがここで言葉を変えてきた。
「誰かが思ってくれたらこうして会えるんだ」
「俺達にもか」
「そして会えるには」
「俺達が覚えていないと駄目だったんだな」
「そうさ、だから余計に嬉しいんだ」
彼は明るい笑顔になっていた。
「御前等が俺を呼んでくれたようなものだから」
「俺達が」
「御前を」
「盆だけだけどな。こうして会えたんだ」
「なあ牧人」
義彦が声をかけてきた。
「何だ?」
「俺達、こうして会えるのは盆の間だけか?」
「当分はな」
「当分!?」
「そうさ、御前等がこっちの世界にいる間はな」
彼はこう述べた。
「会えるのは盆だけさ。けれどこっちに来たら違うぜ」
「そっちの世界にか」
「ああ。そうしたらずっと会える」
強い声になっていた。
「俺がこっちにいた時みたいにな。けどな」
「けどな。何だ?」
今度は明憲が問うた。
「それはずっと先だぜ。御前等がこっちに来るのは」
「そうか。そうだよな」
「俺達も。まだこっちでずっといなくちゃいけないからな」
「そっちも楽しいけどな。こっちも楽しいぜ」
「楽しいか?」
「そうさ。そっちもこっちも変わりはしないよ」
「変わらないか?」
「そうだ。だから今すぐに来たいとか言うなよ。そうしたら他の人が悲しむからな」
「わかってるよ」
その位二人にもわかっていた。笑いながら頷く。
「じゃあそれまで待っていてくれよ」
「ああ」
牧人は二人の言葉に頷く。
「それで今はどうするんだ?」
「とりあえず西瓜もう一つくれ」
「ほらよ」
今度は黄色い西瓜であった。牧人はそれを受け取ると美味そうにかじりつく。
満面の笑みである。二人はその笑顔の牧人を見て思った。
「そういえばな」
「何だ?」
「そっちには西瓜あるのか?」
「勿論あるぜ」
彼は答えた。
「味も変わらないぜ」
「そうなのか」
「花火もな」
「おっ、あるのか」
義彦はそれを聞いて顔を上げる。
「それも一緒か?」
「ああ一緒さ。それも少しくれよ」
「少しどころか幾らでもいいぜ」
義彦はそう応えて彼に花火を渡す。手で持って遊ぶものだ。
「自分で点けるか?」
「ああ」
ライターも受け取る。そして火を点けた。
花火が勢いよく燃える。三人はそれを囲んでいた。牧人がここにいる時は夏になるといつもこうして遊んだ。その時が今戻ったのだ。
「ただな」
「何だ?」
「こうやって三人いないからな、向こうは」
「御前さっきそれは自分で言ったじゃないか」
義彦は苦笑い
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ