第二章
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学生の時だったな」
「あの時は親と一緒だったけどな」
「それでも三人でな。よくこうして遊んだな」
「西瓜も食べてな」
それは同じだった。違うのは彼がいないことだけだった。
「今は二人か」
「なあ義彦」
明憲は咎める様な目で義彦を見て言った。
「気持ちはわかるけどな」
「俺だってわかってるさ」
義彦はまたネズミ花火を取り出した。それにライターで火を点けて投げる。
一度に何個も。それでまた庭が騒がしくなった。
「こんなこと。言ったって仕方ないのはさ」
「そうか」
「けどよ、言わずにはいられないんだ」
騒がしく動き回る花火達を見て言う。
「あいつ、本当にいい奴だったからな」
「そうだな」
これは明憲も同意だった。
「出来たらまた会いたいな」
「そうだな」
明憲もその言葉に頷いた。その時だった。
「うわっ」
不意に庭で声がした。二人はその声ではっとなる。
「誰だ?」
「誰かいるのか?」
「俺だよ」
「!?」
「その声って」
二人はその声に聞き覚えがあった。そう、その声の主は」
「よお」
彼だった。いなくなった筈の彼だった。
丸坊主でシャツに半ズボンとラフな格好をしている。二人が会いたいと言っていた彼だ。
「田中」
「牧人」
二人はそれぞれ彼の姓と名を呼んだ。彼の名前は『牧人』と書いて『まきと』と読むのだ。印象に残る名前である。
「ああ、久し振りだよな」
牧人は二人の前に出て来た。ネズミ花火は後ろで最後の一個が弾けた。派手な音を立てて爆発している。
それを見るのがネズミ花火の醍醐味だ。だが今二人にはそれは目に入ってはいなかった。
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