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信じる心
第三章
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 誰かがこう表現した。
「氷みたいに」
「氷ですか」
「そう、氷だよ」
 氷だった。強張っていた心がこう表現されたのである。言い得て妙であった。
「閉じた心はね。けれどそれが溶けたら」
「心が動くのか」
「そういうことさ。じゃあ今夜は」
 ここで話がまとまりいい方向に流れるのだった。彼にとっても彼等にとっても。
「飲みに行くか。皆でな」
「あの人も誘ってですね」
「勿論。皆で飲むとしよう」
「ですね。お酒は皆で飲むのが一番美味しいですから」
「そうしよう」
「ええ」
 こうして彼も誘われ皆で飲んだ。もうあの氷の様な心は溶けており温かいものになってきていた。それから彼は明るくなった。しかし誰も知らなかった。その明るくなった彼がいつも一冊の本を持っていたということに。それは一冊の本だった。彼の心を温かくしたあの牧師の本だった。


信じる心   完


                   2008・3・7

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