第二章
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を笑っていた。
「やっぱり馬鹿だな」
こう言うのだった。
「騙されてな。しかも」
その騙され方が半端ではなかった。信じていた仲間に裏切られ戦場の慰問に行かされた。しかも金を全部騙し取られてだ。明らかに彼はその牧師を死なせるつもりだったのだ。
それを見て。彼は思った。
「俺より酷いな」
騙されてリストラされた自分よりもだ。それはわかった。
「これはまた」
そうは思ったがそれだけだった。それ以上思うことはなかった。そのうえでまた読み続ける。
読んでいくとその戦場において牧師がしたことは。
「おいおい」
思わず本に対して突っ込みを入れた。
「戦場でこんなことをやるか」
驚いたことにその戦場で心をすさませる兵士達の為に牧師として話を聞き慰めるだけではなく傷付いた彼等の手当てを手伝いそのうえ様々な手配も行っていた。金さえないというのにだ。
「金がないのにどうするんだ?」
読みながらこう思うのだった。
「金がなければ・・・・・・んっ」
読んでいくうちにわかった。どうするか。
「そうか」
読んで納得したのだった。
「そうしたのか」
自分で道具を揃えて持って来て作る。ボランティアであった。
それで施設も作ったりしていた。粗末なバラックであったがそこで兵士達の世話もするのだった。これまでのテントから離れて。
しかも休むことなくだった。不眠不休で働いて人々に尽くす。そうして彼は何時しか兵士達から神の様に称えられるがそれでもそれを意に介さず働き続けるのだった。
「マジなのか」
それを読んで次に思ったのはこうであった。
「しかもよ」
ここでそのページから戻って彼の幼い頃のことを読みなおす。そこに書かれていたのは。
辛い前半生だった。孤児であり周りには冷たくされそれでも必死に生きてきた。それでも苦学して牧師になっている。しかしその間も誰も恨むことなく生きてきているのだ。
「信じられないな」
それを見ての言葉だった。見返してみて。
「ここまでできるのか。人は」
思わず呟いた。それからまた戻って見ていく。何度騙されてもそれでも人の善意を信じ、そして人の為に生き続ける。最後の最後までそうであった。そこまで見て思うのだった。
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