49:ボクの王子様
[5/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
件解決』とはとても言えない結果になったけど……」
「いえ……いいのよ、これで……。これが、きっと一番誰も傷つかない結末だったと思うの……」
「…………デイドのヤツ……」
事件を起こした張本人であるユミルは、隣のマーブルのエプロンの裾をキュッと指先で握る。
そして話の折にと、この場にそよそよと風が村一帯を吹き抜け……
その時だった。
「――――!」
どこか思案顔で佇んでいたユミルの目がここでパチクリと見開き……
今度は俺達の背後、この寂れた村の空き家と空き家の隙間をギロリと凝視し始めたのだ。
その目は今では懐かしい……容疑者の頃だった彼を思わせる鋭さが宿っていた。
「誰ッ!?」
その場所へと向かって短く叫ぶ。
それと同時に、俺は内心「おっ、来たか」とも思っていた。……そろそろ頃合いかと思っていた頃だ。
その家々の間の影からゆっくりと姿を現したのは――
「早いな」
「――まあナ。情報屋は、情報の鮮度と足が命なんでネ」
俺の言葉に気軽な返事をする、いつもの茶のケーピングマントにトレードマークのおヒゲ。
――情報屋《鼠のアルゴ》、その人だった。
「〜っ……」
それを見て警戒した風のユミルはさっとマーブルの後ろに隠れる。
「さテ、それはさておキ。……キー坊にもバレないように隠密に、しかも物音も立てないように近付いてみたのに、どうしてオレっちの存在がバレちゃったのかナ?」
にゅフフ、と興味深そうにユミルを値踏み見ながらアルゴが問うと、ユミルはますますマーブルの奥に引っ込む。
「…………風に、マントのはためく音。……バレバレ」
「ほーっ、そこまで聴こえるとは恐れ入ったヨ。キー坊の噂に違わぬ地獄耳っぷりだナ」
ここでユミルが隠れながらも不愉快そうにさらにギロリとアルゴを睨む。それを彼女は「あいや恐イ恐イ」とおどけて流した。
「おっと、これは失礼したナ。……その耳効きっぷりと外見的特徴を見るニ、お前さんがユミルで間違いないナ?」
「……キリト、この失礼な人は誰?」
「失礼な人とはご挨拶ダナー! これでもオレっちは、お前さんの件の……言わば、影のMVPなんだヨ?」
「は……? 影の……?」
「ああユミル、俺が紹介するよ」
さっきからユミルが俺に話の解説をして欲しそうだったので、俺が間に割って入る。
「もう大体察しは付いてると思うけど、こいつは鼠のアルゴ。俺のお得意先の情報屋だ。大丈夫、こんなんでも信頼できるヤツだよ」
「……キー坊も大概失礼な奴ダナ」
「……アルゴ……? その名前、どっかで……」
ユミルは小首を傾げてなんとか思い出そうとしていたようだが、それに構わず続ける。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ