49:ボクの王子様
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しになる可能性があるのもまた事実だ。
『にしても……そうか。あのガキ、生きてやがったのか』
その後、俺の口から事件の顛末を聞いたデイドは、牢獄の冷たい石畳の床にどかっとあぐらをかいた。
『それもこれも、テメーがあン時に俺を打ち負かさなけりゃァ良かったんだがな』
するとデイドは懐から一本の薬瓶を取り出した。
『あン時、俺があのまま無事にユニコーンを狩れてたら……後でガキのディープ毒だけを解毒、それでトンズラこいてハッピーエンドだったんだがな。そうなってりゃ俺がここに居ることも、ガキが死ぬこともなかったんだ……』
そう自嘲気味に小さく笑いながら、指先に摘まんだ瓶……レベル9の解毒薬をチラつかせながら言う。
それを見た俺は問うた。『ならばなぜ、お前がベリーを攻撃した時……ユミルがベリーを殺されたと思って呆然としていたあの時、彼を殺そうとしたのか』と。
『……俺があの時言ったセリフ、覚えてるか? キリト』
覚えている。確か『――ガキ、悪い事ァ言わねぇ。相棒を亡くした今、犯罪者プレイヤーとして生き続けるくらいなら……せめてもの情けだ。オレが、テメーもアレと同じ場所へ送ってやる』……だったか。
『あのセリフは、ガキに対する建前でも吐き捨てのセリフなんかでもねぇ。……これでも、俺からの本心の言葉だった。……介錯のつもりだったんだ』
俺はその言葉を驚愕の面持ちで聞いていた。
デイドは……俺の予想以上にユミルを言う人間を理解していた。
唯一の友達である使い魔を亡くし、犯罪プレイヤーとして、半狂乱のまま生き続ける苦しみ……そこまでユミルの心境を理解しての介錯の刃だったのだ。
『チッ……俺としたことが余計な事を口走っちまった。オラ、用が済んだらとっとと出てけ。……だが、俺はいつか必ずテメーらと同じ舞台に立ってみせる。……必ず、必ずだ』
……結局のところ、彼はどこまでも不器用に愚直、だったのだろう。
攻略組にあこがれて、攻略組を目指す。ただ、それだけのこと。
――デイドという男は、ただ【ソードアート・オンラインというゲームをロールプレイングする】ということに徹頭徹尾、それしか頭になかった、どこまでも攻略熱心な一プレイヤーだった。
監獄エリアを立ち去る間際、ふと彼の牢獄を振り返ると……牢屋の中で両手槍のソードスキルの素振り練習を始めていた彼の姿を見て……俺は、そう思った。
………
……
…
「――デイドは事件の事を誰にも話していませんでした。これで大多数のプレーヤーが目当てにしていたユニコーンは絶滅し……犯人の死神は例え探す人が出て来ても、居やしない偶像の《大男》を探し回るだけに終わるでしょう。……これで事件は永久に迷宮入りです。……ある意味、『事
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