49:ボクの王子様
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俺は、目覚めるやいなやユミルの容体を第一に問うてきたマーブルを彼は大丈夫だと宥めたあと、事情を説明するのももどかしく彼女の足に刺さった投擲ナイフを抜き、解毒結晶で麻痺を回復させた後に……アスナを含めた三人で、この場へと向かってくるプレイヤー達に向けて、あるひと芝居を打ったのだ。
この場へと集まってくる集団に向けて走る俺とアスナ、それを追いかけるフードを深く被ったマーブル。そして俺とアスナは集団へと叫んだ。
――『死神だ』『適わない』『殺されるぞ』『逃げろ』などなど……と。
そう。彼女には――他でもない、死神事件の犯人《死神》を演じてもらったのだ。
そして、その効果は絶大であった。なにせ……ビーターで有名な《黒の剣士》をはじめ、血盟騎士団副団長こと《閃光》のアスナまでもが二人して大きくHPを削られ、それがたった一人の――マーブルにはアスナに投擲ピックでダメージをごくわずかに与えてカーソルを短時間イエローに染めてもらい、加えてほんの少しだけ《デモンヘイト》を使ってもらうことで――不気味なエフェクトを帯び、血のように赤黒い大鎌を持ったイエローカーソルの《死神》に追いやられているのだから。それを見た彼らの、瞬時に怯えた遁走のUターンっぷりは、思わず笑いをこらえるのが大変だった程であった。
そしてウィークラック村の圏内へと逃げ込んだ俺達は――死神役のマーブルにはここで再び森の奥へと一旦引き返して身を隠してもらった――逃げ疲れて肩で息をしているプレイヤー達に教えたのだ。
――死神の正体は……黒装束の大鎌を持った大男だった、と。
――加えて最後のユニコーンは、皆には悪いが俺が討ち取った、と。
因みに、当時の俺のカラーがイエローなのは……ユニコーンは実は死神の使い魔で、犯罪者の使い魔とはいえ『犯罪を犯していない使い魔を倒したことによる一時的なイエロー化』である為だ、と説明したことも付け加えておく。
ビーターこと俺と、閃光のアスナ二人の口から発せられた、それらの証言の信憑性は彼らにとってもはや確固たるものであった。一つ返事でそれを信じてくれたプレイヤー達は徒労感を隠さずため息と共に三々五々散っていった。
そうしてその場をひとまず収束し、ユミルを宿へ寝かせた後……間をおかず俺達は第一層《はじまりの街》へと向かった。
俺達以外の中で、唯一事件の真相を知る人物……デイドを追う為である。
彼を追うのは簡単だった。最後に俺が彼を吹き飛ばしたのは回廊結晶の先――その行き先はユミルの言った第一層。その後は追跡スキルで足跡を追うだけだったからだ。とはいえ、デイドと離別してから一時間と立っていないものの、ユミルの噂を彼の口から広められるのはマズい。そう焦りながらデイドを追跡したのだが…
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