暁 〜小説投稿サイト〜
なくなれ交流戦
第六章

[8]前話
「優勝することがまず第一よ」
「何ていうかなあ」
「千佳ちゃんあまり考えてないでしょ、先のこと」
「とりあえずリーグ優勝だけ考えて」
「そこから先は」
「考えって。カープを何だと思ってるのよ」
 冷静に返す千佳だった。
「こっちは十六年連続Bクラスだったのよ、阪神よりも長い薄暗闇の暗黒時代を味わってきたのよ」
「それでかよ」
「優勝のことだけで頭が一杯になるのね」
「そこから先は考えられない」
「そうなってるのね」
「優勝!?出来るなら味わってみたいのう」
 ここでまた広島弁になる千佳だった。
「カープの暗黒時代は長かったけえのう」
「微妙に前向きで後ろ向きだな」
「よくわからない娘ね」
「何でそんなに歪なんだよ」
「素直に応援出来ないの?」
「素直に応援出来たらいいわよ」
 またしても普通の言葉に戻る。
「十六年連続Bクラス、産まれる前からのそれを味わったらそうはならないから。優勝なんてもっと昔だったから」
「それはわかるにしてもな」
「幾ら何でも千佳ちゃんのはね」
「俺達阪神ファンより歪だな」
「広島ファンってそうなの?」
「私だけでしょ。というかこの学校でカープファンって少ないでしょ」
 千佳達の通っている八条学園は関西にある。関西といえば。
「阪神ファンばかりで」
「関西で阪神じゃなかったら何だよ」
「ここは虎のメッカよ」
「巨人応援したら人権剥奪されるしな」
「カープはまだいいけれど」
「そんなので他のファンがどうとかあまり知られないから」
 このことでも微妙な千佳だった。
「全く、カープは広島商業とかに野球を教わってもっともっと練習しなさい」
「いや、練習し過ぎで疲れて怪我多いんだろ」
「過ぎたるはでしょ」
「何かそこもなあ」
「あまりね」
「いいのよ、カープは帝国海軍よ」
 こんなことも言う千佳だった。
「呉があるからね、広島には」
「それで海軍かよ」
「今だと自衛隊で」
「それでよ」
 また言う千佳だった。
「もっともっと練習して勝つのよ」
「それで交流戦も勝てたらいいな」
「疲れが出ないでね」
「あれだけはなくなることを願うわ」
 この考えは変わらない千佳だった、しかし何はともあれだった。
 その気持ちは既にペナントに向かっていた、そのうえでクラスメイト達に極めて強い言葉で言うのだった。
「まあ今年も後半追い上げるから」
「とりあえず頑張れ」
「巨人じゃないから嫌いにはならないからね」
 クラスメイト達はそんな千佳を優しいがそれと共に妙に冷めた目で見て声をかける、千佳のカープ愛は終わることなく続くのだった。


なくなれ交流戦   完


                          2014・7・1
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ