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戦国異伝
第百六十七話 信玄動くその七
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「それだけ送って頂けるか」
「本願寺との戦と同じだけの数をか」
「流石織田殿よ」
「頼りになるわ」
「とりあえず来たのは俺達だけだけれどな」
 煉獄は左手の親指で自分自身を指し示しながら笑って彼等に言った。
「けれどすぐにそれだけ来るからな」
「うむ、ではな」
「今は守ろうぞ」
「この浜松城で籠城じゃ」
「そうしようぞ」
「殿、それではです」
 本多正信もだ、家康に確かな声で話す。
「ここは籠城してです」
「それが一番じゃな」
「織田殿がこの浜松まで来られるのを待ちましょう」
「武田の動きは速く攻める勢いも凄いがな」
 まさに火、風の如くだ。
「それでもな」
「織田殿の動きも速いですから」
「我等さえしっかりしておれば」
 家康も希望を見出していた、明るい顔で述べる。
「織田殿が武田の軍勢を横から攻めてくれる」
「だからこそ」
「ここは籠城じゃ」
 家康自身もこう言う、そうしてだった。
 織田軍は今は籠城することにした、そのうえで。
 煉獄達も入れた全軍でだ、徳川軍は浜松城に籠城した。他の城は空にしてもあえてその城に集結したのだ。
 武田軍はもう駿河まで来ていた、そこで織田と徳川の動きを聞いた。信玄は馬上で十勇士からその報を聞いて笑顔でこう言った。
「やはりそう来たか」
「やはりとは、では」
「御館様は既に」
「そうするのが常道じゃ」
 織田も徳川もだ、それがだというのだ。
「織田信長も徳川家康も戦がわかっておるな」
「左様ですな」
 軍師である山本勘助も隻眼の顔で応える。
「やはりあれだけの威を誇るだけはあります」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「御館様、ここは」
 ここで申し出た山本だった。
「それがしに策があります」
「それはどういった策じゃ」
「それですが」
 ここで山本は信玄の馬に己の馬を寄せた、足は悪いがその馬の動かしはいい。そうして信玄の耳元で囁いた。
 その囁きを聞き終えてだ、信玄は笑ってこう言った。
「面白いのう」
「では」
「うむ、ここはこうしようぞ」
 こう言うのだった、そしてだった。 
 信玄は全軍にだ、こう命じたのだった。
「このまま進んでいくぞ」
「遠江の西の城はどうしますか」
「捨てよ」
 無視しろというのだ、馬場の問いへの返事だ。
「空城なぞ後はどうとでもなる」
「左様ですか」
「徳川家康を降せばな」
 その城も全て自分の城になるからだ、それでいいというのだ。そしてこのことは殊更強く言うことだった。
「そして民や田畑、町はじゃ」
「はい、何があろうともですな」
「手出しをしてはなりませぬな」
「若し手を出せば死罪とする」
 断固とした言葉であった。
「誰であろうともな」
「わかっております、我等は武士
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