第十三話 向日葵の紹介その四
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「家元さんも」
「うん、だからね」
「子供が出来ず跡継ぎは必要で」
「そうした事情で。その娘が養子さんになったのよ」
「何か複雑な事情だな」
薊もここまで聞いて腕を組んで言った。
「まあ何処にでもあるか」
「そう思うわ。何しろその娘が養子に入ったのは産まれてすぐだったけれど」
「ご両親は既に五十五を超えておられていましたから」
「そうなのよ、だからね」
「その方が養子になられたのですね」
「そういうことなのよ」
向日葵はこう桜に応えると共に他のメンバーにも話した。その手にはずっと紅茶のカップ、マイセンの見事なものがある。
「その娘も孤児で養子なのよ」
「本当に孤児ばかりだな、あたし達って」
薊はここまで聞いて腕を組んだままでこうも言った。
「考えれば考える程奇妙なことだよ」
「そうよね、まあその娘もご両親がいい人達だから」
「幸せなんだな」
「可愛がってもらってるわよ。ただね」
「ただ?何かあるんだな」
「家元の家だからね、お茶にお花に踊りの」
そうした諸々を継がなくてはいけない為、というのだ。
「お家出の仕事とか躾は厳しいのよ」
「それは当然か」
「そう、やっぱりね」
そうしたことはというのだ。
「だからその娘もざっくばらんでもね、普段はそうでも」
「いざって時はか」
「ぴしっとなるのよ。着物だって着られるし」
「着物ねえ。だったら」
薊は着物の話も聞いてだった、そしてだった。
桜も見てだ、こうしたことを言った。
「桜ちゃんと相性いいか」
「茶道や華道ですから」
「日舞もだよな」
「はい、着物は付きものなので」
「だよな、じゃあ相性よさそうだな」
「薙刀部なのよね、その娘って」
菊は向日葵に彼女の部活のことを問うた。
「そうよね」
「そうよ」
「薙刀部も袴だからね」
菊がここで言うのはこのことだった。
「それじゃあね」
「そう、その娘着物着るの上手よ」
「やっぱりね」
「そうした娘だから」
「ここまでで結構わかってきたかしら」
菊はこうも言った。
「まあとにかくその娘と」
「うん、お話してみようね」
「そういうことでね。しかし」
ここでだ、菊は話がまとまったところでだ。
自分が手にしているティーカップを見てだ、神妙な顔と目になってそのうえで智和に顔を向けて尋ねたのだった。
「先輩、このカップは」
「マイセンのものだよ」
「それってドイツの陶器ですよね」
「知ってるんだね」
「結構、高いですよね」
「うん、そうかもね」
「いや、そうかもじゃなくて」
マイセンと聞いていささか引いた苦笑いになってだ、菊は智和に言葉を返した。
「凄いですよ、こんなの使って」
「そうかな」
「マイセンなんてそうそう」
「そうい
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