第六章
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の深い言葉である。彼も今これを聞いて落ち着くのを感じていた。
「これでいいですじゃ」
「次はスープですね」
「スープとは言わないんですじゃ」
「あっ、そうなんですか」
これはアッサムにとっては驚きであった。
「何か変わっていますね」
「変わっているというか日本語らしくて」
こうアッサムに述べる。
「向こうではスープはなくておつゆと言うそうで」
「そうなのですか」
「味もかなり違います」
「あっ、それは大体わかります」
これについては彼もわかっていた。といよりは知っていることであった。
「ですよね。それもかなり」
「タイの味と日本の味は違います」
老人はそれをこう表現してきたのであった。
「タイの味は辛いですね」
「はい」
それであまりにも有名である。タイ料理といえば辛い。また彼等もその辛さを愛している。そういうことであった。だがそれも日本では全く異なるのだ。
「ところが日本の味は」
「薄いんですよね」
「そうなのですよ。これは御存知ですかな」
老人とアッサムはこの時麺を踏んでいた。綿の袋に入れてから踏んでいるのである。しっかりと踏んでコシを出そうとしていた。
「これはといいますと」
「そのおつゆのだしですじゃ」
これの話を出してきたのであった。
「どうですかな、そちらは」
「ああ、それでしたら」
彼にもわかることであった。それはもう聞いていた。
「何でも海草からだしを取るんですよね」
「あと小魚を干したものから」
それを老人も言う。やはりそれは真実であったのだ。
「だしを取ります。知っているのなら話は早い」
「そんなものからだしが取れるのでしょうか」
「それが取れるようですね」
そうアッサムに語ってきた。
「信じられませんがこれもこれで味が出ます」
「そうなのですか」
「それでどうですか?」
あらためて彼に言ってきたのであった。
「その昆布と小魚をこれから」
「あるのですか」
「乾物屋に特別にいつも頼んでいます」
そういうことであるらしい。アッサムはそれを聞いてまた怪訝な顔になった。
「いつもですか」
「何、向こうも売り物ではないので」
そもそもタイではそうした乾物は食べはしない。少なくとも海草や小魚といったものを口にすることはない。日本人がそれを欲しがっているのを奇異の目で見ていた程である。
「お金もかかりませんですじゃ」
「お金もなんですか」
「ええ。ですから気が楽ですじゃ」
笑ってこう言うのであった。
「では早速それを取りに行きますか」
「はい、それでは」
こうして麺を仕込み終えた彼等はまた市場に向かった。そこに入ると今度はその乾物屋に入った。店に入ると底の親父が老人の顔を見てすぐに言うのだった。
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