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不思議な味
第五章
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「その辺りは」
「お寺では料理番をしていました」
 ここでもそれを正直に述べた。
「ですから多少は」
「ふむ。では充分ですな」
 老人もそれを聞いて満足した顔になった。
「それではな。こちらに参られよ」
「どちらに」
「わしの家ですじゃ」
 にこにことした笑みでアッサムに告げるのであった。
「そこで教えさせてもらいますのでな」
「御老人の家ですか」
「何分騒がしいところですがそこは我慢して下され」
 また笑顔で彼に言ってきた。
「子供達に孫達が大勢おりますがな」
「はあ」
「賑やかな中でやるのがお嫌いでしたら他の場所にいたしますぞ」
「いえ、それは」
 いいと言った。彼も結構人好きだ。だからそれはわりかし平気だったのです。
「大丈夫ですので」
「左様ですか。ならばなおよきこと」
 その言葉に満足して彼を小路に案内する。路の端には犬や猫がいてしょっちゅう吼えたり鳴いたりしながら餌を食べている。その横を通り過ぎながら先に進むとやがて粗末な一軒家に辿り着いたのであった。
「ここですか」
「そうですじゃ」
 老人はアッサムに顔を向けて答えてきた。
「中に入られますな」
「はい」
 最初からそのつもりである。静かに老人の言葉に頷く。そうして家の中に入ると家の内装よりもまずは何人もいる子供達に圧倒されたのであった。
「あっ、お爺ちゃんお帰り」
「何か買って来てくれた?」
「そのお坊さんは?」
「ははは。孫達ですじゃ」
 老人はその子供達にまとわりつかれながらその好々爺の笑みをアッサムに向けながら述べる。アッサムにも三人程子供達がついていた。
「子供等は皆働きに出ておりまして。わしが面倒を見ておりますのじゃ」
「そうだったのですか」
「女房もいますがな」
 どうやら連れ合いもまだいるらしい。
「今は市場に出て野菜を買いに出ています」
「そうなのですか」
「はいですじゃ。これこれ」
 老人はその孫達を温厚な声をかけつつどけはじめた。

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