二人の姫の叶わぬ願い
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安堵がどっと湧き出る。見上げる瞳は真実の色。影を落とす事無く、本当に何も無かったんだと伝えていた。
ではどうして、そんな悲しげな声を紡ぐのか、私には分からなかった。
「ねぇ……お姉ちゃんは今回の戦で美羽を殺すの?」
一瞬の空白。
彼女の口から零れた名前に、私の頭は真っ白になった。
小蓮が袁術の真名を呼んでいる。
妹が敵を助けたいと言っている。
憎い敵であるはずのあいつを……小蓮は殺さないでと言いたいんだ。
ぐるぐると思考が回る。
目線を動かして周りを確認すると、三人ともが苦い顔をしていた。小蓮は既に他の三人にも話しているのだ。
亞莎は……哀しげな色を瞳に宿して首を振った。
彼女の中では殺さないという選択肢は無い、そういうこと。軍師としての判断では、小蓮を傷つける事を選んだのだろう。
「小蓮は袁術と仲良くなった……そうなのね?」
少し身体を離して聞くと、小蓮はコクリと頷いた。
「美羽だけじゃないよ。利九――――紀霊は私に勉強や武術を教えてくれた。張勲だって、美羽を守ろうと必死なだけで、一緒に遊んでくれたりもしたよ? ご飯だって美羽と大体一緒だったし、建業の街を良くする為に仕事を手伝ったりもしてた」
鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
袁家にしては人質としての待遇があまりに良すぎる。それでは普通の客分と同じでは無いか。
「だからねお姉ちゃん。美羽達を……助けて欲しい。せめて命だけは助けてあげて欲しい」
今にも泣き出しそうな顔で言われた。それほどまでに小蓮は仲良くなってしまったということ。
頭の中で、張勲が嗤った気がした。袁術が悪事を企む笑顔を浮かべた気がした。紀霊に鼻で笑われた気がした。
――そうか……これが袁家のやり方かっ!
心の中に沸き立つのは殺意と憎悪。
奴等は私達をかき乱す為に、小蓮を懐柔し、自分達の色に染め上げていたのだ。
橋渡しなど不可能。仲良くするなど出来るわけが無い。どれだけ……どれだけ私達の部下達を使い捨てにされてきたと思っている。
小蓮は私達の苦労を知らない。どれだけの兵士達が命を賭けて、想いを託して来たか知らない。
もう……私達は止まれない所まで来ているんだ。
死んだ部下達の無念を晴らすのも王の務め。姉さまは絶対にそれを曲げない。私も……曲げる事は出来ない。
助け出して直ぐだというのに、私は小蓮を傷つけないといけないのか。
やっと姉妹三人で仲良く暮らせると思っていたのに、亀裂を作らなければいけないのか。
――どれだけ私達を苦しめるのだ、あの女狐めっ!
無意識の内にギリと歯を噛みしめると。一寸だけ小蓮が怯えた。しかし直ぐに、キッと強い瞳で私を睨みつける。
「やっぱり王とし
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