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不思議な味
第一章
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。美味しいかというと」
「違うの?」
「何かな。御椀に入れるのと変わらないね」
 彼にとってみればそうであった。
「しかもこぼれやすいし。何か悪いのかな」
「日本軍のおじちゃん達はそう食べていたよね」
「それを真似したんだけれどね」
 何かあるとすぐにガミガミ怒るので正直あまり近寄りたくない相手だったが。流石に彼は僧侶だったので殴られはしなかった。しかし日本軍の厳格さと融通の利かなさにはかなり参ったのは彼も同じだったのだ。こんな人間がいるのかと驚いた程である。今でもその驚きは残っている。
「どうもね。あまりね」
「日本軍のおじちゃん達も変わった人達だったよね」
「そうだね」
 一言で言うとそうだった。
「あんなに怒る人達って他にはいないわよ」
「あの人達にとってみればそれが普通だったんだけれどね」
 アッサムはそう女の子に述べた。
「僕達にとっては普通じゃないんだよ」
「普通じゃないの」
「そう、それだけ」
 それだけだと言ってみせる。
「それだけのことなんだよ。けれどお嬢ちゃんは何かされたの?」
「私は別に」
 その問いには首を横に振ってきた。
「けれどお父さんが」
「何かされたの?」
「殴られたの」
 日本軍の常である。これで日本軍は恐ろしい連中だとタイ人達に恐れられたのである。厳格なだけではなく容赦なく殴ってくるというので恐れられたのだ。
「何かよくわからない理由で」
「それだけ?」
「うん、それだけ」
 こうアッサムに答えた。
「それだけ。あとお父さん日本軍のおじちゃんに変な食べ物教えてもらってたよ」
「変な食べ物!?」
 アッサムはそれを聞いて今時分が食べている御飯を見た。よく見ればこれもまた実に変な食べ物だ。彼にとってはあまり美味しくはないしだ。
「そう。何かね」
「うん」
 女の子の話を黙って聞いている。
「麺なんだけれどね」
「麺なんだ」
「それが本当に変な麺なの」
 日本人の食べるものは彼等から見ればそうである。アッサムが今食べているものにしてもだ。何故これが美味しいのかわからないのだ。
「味がなくて」
「味がない」
「そうなの。太い麺でね」
「ふうん」
 それを聞いてもわからない。話を聞いてもあまり想像できない。
「それでね。茶色のお汁で」
「茶色の」
「あと黒い麺も食べていたわ」
「黒っ!?」
 今度は黒い麺ときた。話を聞いてさらに訳がわからなくなった。
「何なの、それって」
「わからないの」
 女の子は首を捻ってまた言う。
「何が何なのか全然」
「日本人の食べるものはわからないけれど」
 これはアッサムの本音であった。
「また。変なものを食べていたんだね」
「お父さんに教えてくれていたけれどそれでも」
「わからないんだね
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