第一話
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苗字は剥奪させていただきます。なので、その旨の承諾のサインと、新しい苗字をこちらに。これについては、新しい苗字を考えることもありますので、2、3日待つことも出来ます」
「いえ・・・そこまで考えるつもりもありませんので」
差し出された書類に下の名前、“一輝”とだけ書き、新しい苗字には母さんの旧姓だった“寺西”と書く。
この苗字ならどこかの陰陽師のものでもないし、俺が使っても問題ないはずだ。
「はい、ありがとうございます。では、次の話に移らせていただきます」
そう言ってそいつは書類を持ってきたかばんにしまい、新しい書類を取り出す。
「今からの件については、強制というわけではありません。あくまでも一つの提案として、聞いてください」
「・・・なんですか?」
「あなた、席組みに入りませんか?」
その言葉に、俺は内心驚いていた。
席組みというのは、日本でのトップ十人に位置する陰陽師を指す。といっても、実力があっても引退した人などもいるので、本当の意味での実力トップ、というわけではないが。
そして、彼らには様々な特権が与えられる。
そこにまだ奥義を習得してすらいない卵がつくことなど、今までにないはずだからだ。
「・・・僕はまだ卵です。それを分かっていますか?」
「ハイ、分かっていますよ。ですが、連絡ではあなたは霊獣を殺した、とありました」
「・・・それで?」
「今、この国には霊獣を殺した人間はあなたを含めて三人しかいません。問題はないと思います」
そういえば、俺以外には今の第一席、第二席しかいなかったな。
でも、卵がそんな立場についたら、反感を抱く人も多いと思うのだが・・・
「それと、交渉をするようで心苦しくはありますが、あなたが席組みに入ってくださるのなら、私があなたの後見人になります」
「・・・俺に首輪を付ける気か?」
「そんなつもりはありませんよ。ただ、こちらの世界に一般人を巻き込みたくはないでしょう?」
それは、確かにそうだ。
それに、席組みに入ることで得られる特権があれば、こんな中途半端な立場で暮らすのは、かなり楽になる。
「ちょうど一人、年をとったからと引退した人がいますので、一つ空席が出来ているのですよ」
「・・・分かりました。その話、受けます。ただし、席組みとしての職務くらいならやりますが、あなた方の命令を聞くつもりはありません」
「はい、それで構いませんよ」
そんな考えから、俺はこの話を受けた。
その場で席組みに入ることへの承諾書を書いて、明日、顔見せをすることになった。
まあ、深く関わる必要はないよな。今の俺は、そんな気分でもないし。
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