第5章 契約
第92話 血の盟約
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味。
しかし!
しかし、その次の瞬間、今までの契約のくちづけとは違う異質な何かを感じる俺。
今までの契約のくちづけは、軽くくちびるとくちびるが触れ合う程度の物。しかし、今回の血の盟約に関するくちづけは……。
躊躇いがちに侵入して来たソレは俺の舌に触れると、まるで俺を誘うかのように軽く左右に動かし……。
それは甘美な、そして、普段の彼女から考えられないような大胆な行動。
自らのそれを絡め、導き、軽く吸い、そして……。
いや、それはおそらく俺が同時に侵入して来た液体を吐き出さないようにする為の行為。
血液を呑み込むと言うのは、色々な理由から問題が有る行為ですから。
特に同じ人間の血液の場合は精神的な禁忌にも繋がり、更に、人に因っては強い嘔吐感をもよおす物と成る場合も有る。
お互いのくちびるを通し、口腔を通過。そして、其処から身体の中に染みわたって行く何か。いや、そんな生易しい物じゃない。荒々しい、身体中に何か別の力が溢れて来るような感覚。本来なら消化器から吸収されなければならないはずの物が、何故か体内に侵入すると同時に影響を及ぼし始める。
心臓が跳ね上がる。俺と彼女の霊力に呼応するかのように、周囲に存在する小さき精霊たちが活性化し、闇に包まれつつあった世界を強烈な光で満たして行く。
この時に成って初めて、返りの風により傷付き、ずっと鮮血を流し続けて居たはずの傷口がすべて回復している事に気付いた。
そして――――
今度こそ本当に、離れ難い香りを残して俺の腕の中から解放され、立ち上がる彼女。
そして、脚を伸ばし、未だ巨木を背に未だ座り続ける俺に対して、その華奢な右手を差し出して来る。
表情も、そして彼女が発して居る雰囲気も普段の彼女のまま。更に、先ほどまでは確かに紅く輝いていた瞳も、普段の彼女を表現する蒼へと戻って居た。
但し、普段よりは多少上気した頬が、彼女の心の在り様と体調を示して居るように感じられた。
成るほど。これは、俺との間に血の盟約が結ばれ、不足気味だった陽の気の補充が出来るようになったと言う事なのでしょう。まして、これは俺に取っても悪影響を及ぼす物では有りませんから。
陽と陰は相反する物では有りません。女性である彼女が作り出した陰の気を俺が受け取る。それも理に適った行いと成りますから。
ただ……。
「それで、俺はオマエの事を何と呼べば良いのかな」
今まで通りタバサ、と呼ぶべきなのか。それとも、微かな記憶の中に残る名前……。おそらく、前世で彼女の事を呼んで居た呼び名の方なのか。
差し出された右手を掴み、しかし、そんな物を必要としないかのような軽やかな動きで立ち上がりながら、そう問い掛ける俺。
それに、呼
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