第5章 契約
第92話 血の盟約
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は些細な違いだったとしても、少しずつ歴史の流れが狂い始め……。
この場合の最初の介入は彼女が前世の記憶を持って生まれて来たと言う事。つまり、十六年前。それはほんの小さな。正に蝶の羽ばたきに等しい違いだったとしても……。
何時かはすべてを吹き飛ばす嵐と成り、彼女の知って居る歴史をまったく違う歴史へと書き換えて仕舞うはず。
そう考えると……。彼女が生まれてからの時間の経過から考えると、どう考えても彼女の知って居る歴史とやらが今、彼女自身の行動の役に立って居るとは思えません。
それが証拠に、彼女が持って居る知識では、母親も、そして、父親が死する歴史も書き換える事が出来なかったのです。それに、俺に刻まれた聖痕や使い魔のルーンに関しても彼女は知らない、もしくは覚えていないような雰囲気でしたから……。
おそらく、彼女が知って居る歴史の流れと言うのは、今、俺と彼女が経験している歴史の流れとは違う物と成って居る可能性の方が高いでしょう。
ただ、可能性としては……。
其処まで考えて、しかし、少し首を振って新しく浮かんだ仮説を否定する俺。何故なら、その仮説は有り得ない事に気付きましたから。
もし、俺の腕の中の少女が未来から転生して来た存在だったとして、彼女が変えようとしている歴史が、そもそもその歴史を変える事が出来ない世界の物、……と言う事は有り得ませんから。
まして、歴史への介入が不可能なら、前世の記憶を持つ事自体が不可能だと思います。
その前世の自分と言うのが、更に前世の記憶を持っていない限りは。
それも、まったく同じ流れで、同じ行動を繰り返して、同じ失敗を続ける歴史を永遠と繰り返し続ける……。
流石にそれは、脆弱な人間の精神では耐えられないでしょう。
ならば答えはひとつ。
「必ず、と言う答えは用意出来ない」
流石に万能の存在でない以上、この部分は確約出来ない。それでも、
「約束は守る。この答えでは不満かな?」
彼女の言う自らが知らない歴史とやらが、俺に関わる物……俺があっさりと人生から退場したと言う歴史の改竄ならば、以前、彼女と約束した『簡単に彼女の前から消えるような事はしない』……と言う約束を果たせば、彼女の知らない未来を見せる事は可能でしょう。
但し、そのタバサの前世で同じ時間を過ごした俺が、同じような約束を交わしていない可能性は……。
いや、そいつが俺ならば、求められれば約束を交わしたでしょうが、求められなければ、自ら申し出て約束を交わす事など有りませんか。
楽な生き方を模索して、易きに流れ易い俺ならば、いばら道。困難な道のりを選ばなければならなくなる『約束』を自ら望んで交わす訳は有りませんから……。
微かに……。本当に微か
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