第5章 契約
第92話 血の盟約
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但し、その行為が願掛け。それも俺の未来に関する願掛けならば、例え俺がその理由……普段から無と言う表情のみを顔に貼り付け続けて居る理由を問うたとしても、答えてくれる事は絶対にないのですが。
もっとも、それは今のトコロ関係のない事。少し他所に行き掛けた思考を元に戻す俺。
そして、小さく囁くようにこう続けたのでした。
「離してやっても良いんやけど、その為にひとつ、オマエさんにはして貰いたい事が有るんやけどな」
強く彼女を抱きしめたままで囁く言葉に相応しいのは愛の詩。そして、そのまま……。彼女の答えも聞かず、更に言葉を続ける。
何故か懐かしい彼女の肌の香りを心の支えと為しながら……。
「俺と血の盟約を結び、血の伴侶として共に歩んで欲しい」
まるでプロポーズに等しい内容を……。
真面に彼女の顔を見つめて言えるような内容ではない。確かに、今までもこのハルケギニア世界の使い魔契約。死がふたりを分かつまで離れる事の出来ない契約を交わしていたけど……。夜の貴族。吸血姫に取っての血の伴侶と言う存在は、それよりも更に一歩進めた関係であるのは間違いない。
ただ今朝の彼女の言葉。俺を屍食鬼にしたくない、と言う言葉から推測すると、彼女の方からそれを求めて来る事は有り得ないでしょう。
但し、血の渇きと言う物が何時までも理性で押さえていられる種類の物でない事は、当然、彼女も知って居るはずなのですが。
「わたしが……」
俺の言葉に、身体を弛緩させた彼女が、小さな声……普段以上に小さな声で囁く。俺だけに聞こえるように。
「わたしが知らない未来を見せて欲しい」
俺にだけ聞こえたら十分な内容を……。
その言葉の中に微かな違和感。いや、意味不明の言葉と言うべきですか。それは、わたしが知らない未来、と言う部分。それはまるで、彼女が『知って居る未来』が有るような意味にも取れるのですが……。
しかし……。
どんな預言者であろうとも、未来を完全に予言する事は難しい。完全な予知を行ったと思っても、その予知を行ったのが人間で有る以上、ある程度の願望が混じる可能性も有る。まして、俺の知って居る世界の時間跳躍能力者でも、ひとつの世界に同じ魂を持つ存在が同時に存在していた例はない。
つまり、時間跳躍能力者が何らかの未来を見て元の時代に戻って来たとしても、それは飽くまでも可能性のひとつでしかないと言う事。無限に存在する平行世界のひとつを垣間見て来たのに過ぎない状況。歴史が同じ軌跡を描いて行く可能性は、神のみぞ知る、と言うレベル。
それに、もし彼女が同じ時間をループするタイプの転生者だったとしても、彼女が自分自身の歴史に介入した瞬間、それ以後の歴史はまったく別の歴史を刻み始めるはず。
そう、確かに最初
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