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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第92話 血の盟約
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から、更なる魔力の増大が感じられた。それは巨大な信仰を受けし神に相応しい呪力。
 空間すら歪むような濃密な呪に覆われる元アルマン。その瞬間、黒き液体を流し続けていた傷口から、じゅくじゅくとした肉芽に等しい無数の何かが現われる。

 再び、元アルマンが吼えた。その声が響き渡ると同時に、肉芽に等しいそれが見た目にはゆっくりと。しかし、現実の時間に換算すると数秒も経ずして徐々に大きく成って行く。
 それらは生命自体を冒涜的するような動きを繰り返し、お互いに絡み合い、あるいは分岐して瞬く間に成長して行く。

 そう。骨を。血管を。筋肉を。そして、表皮を見ている目の前で次々と再生して行くのだ。

「何ちゅう回復力……」

 まるで植物の発芽の瞬間をビデオの超高速で見せられるような雰囲気で、俺の見ている目の前で完全に失ったはずの両腕を再生して仕舞う元アルマンの魔物。
 正に悪夢の中の出来事。これだけの回復力を有する存在を、果たして倒す事が出来ると言うのか――

 暗澹たる気持ちでそう考える俺。しかし、悪夢の中の出来事は、それだけで終わる事はなかった。
 そう、吸血鬼の属性を持つ神性の驚異的な回復力を見せつけてくれたそのビデオの早回しの傍らで、大地から湧き出して来るかのように立ち上がるふたつの影。そこは、確か先ほど、千切れ、跳ばされたふたつの腕が転がったはずの場所。

「分身――なのか?」

 分断され、単なる肉片と化し、そのまま朽ち果てるしかないと思われた両方の腕が自己修復を……。いや、それを自己修復と呼ぶ訳には行かない。先ほど、本体の方が為したのが自己修復ならば、今、この両方の腕が為したのは分身の作成。
 のっぺらぼう。表情もなければ、身体の凹凸のない、まるで影の如きそれが立ち上がり、一歩前に進む毎に、本体のソレに似た形を作り上げて行く。

 一歩目。踏み出した足が形成された。
 二歩目。それぞれに欠けていた片方の腕と、そして、残された足が完成。
 三歩目。首と頭の境界線が出来上がり――
 四歩目。本体と同じ、翡翠の如き光沢を持つ仮面が形成され――

 最早、笑うしか無いような状態。本体の左右に並ぶその姿は、ある種の神像と、その左右を護る陪神の如き威容。まして、一体の時に周囲に放って居た神威でさえ、一般人ならば間違いなく呆然とその場に立ち尽くし、その次の瞬間にはひれ伏して、ただただ、祈るしか方法がなく成るような、そんな威圧感を発して居たのだ。それが三体。どう考えても尋常な神経の持ち主ならば、この瞬間に絶望して、素直に尻尾を巻いて逃げ出していたでしょう。
 もっとも、確かに元々存在したヤツと比べて、新たに登場した二体はやや小振りで、その分、神威も抑えられているようには感じる。
 ……のですが、それでも一体だけの頃と
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