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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第92話 血の盟約
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生。
 刹那、俺の右腕に痛みが走り、生命の源が白いシャツを赤く染めて行く。

 そう。空間を走った次元の裂け目の如き何かが過ぎ去った後、その進行方向に存在した一体の剪紙鬼兵(せんしきへい)の上半身が音を立てて後方に。そして、下半身の方は其処から余計に二歩だけ前進した後、急に何かを思い出したかのように立ち止まって……。
 その場で倒れ込み、そして、元の紙切れへと還って行ったのだ。

 実際、剪紙鬼兵では囮程度の役にしか立たないでしょうね。剪紙鬼兵とは俺のデッドコピー。彼ら自身は仙術を行使する事が出来ない、一般人に毛が生えた程度の存在。
 確かに、元は俺ですから、先ほどまで大地に寝転がって居た時のアルマンとならば互角以上に戦えたでしょうが、テスカトリポカの憑坐と成って終ったヤツと互角に戦う事は流石に……。
 今のヤツは、間違いなくテスカトリポカと言う邪神に選ばれた存在。この期に及んでようやく、アルマンは自称から、本当に神に選ばれた存在へとランクアップした、と言う事。
 但し――
 但し、現在のヤツ……身長三メートル以上の異形に、人間だった頃のアルマンの意識や記憶が存在しているとは思えませんが。

 大きく反り返り……天自体を睨むかのようにして元アルマンの魔物が咆哮を上げた。
 まるで蒼穹を……。いや、その彼方に居る何者かに挑むような巨大な、そして、一般人ならばその声を直に聞いただけで気死しかねない呪いの籠った声で。
 元アルマンの遠吠えとも、呪文の詠唱とも付かない叫びに呼応するかのように、ヤツの周囲に浮かび上がる数多の魔法円と、それに対応するかのような蒼白き光の珠。これはおそらくプラズマ球。
 しかし!

 ヤツの胸から発生する闇を切り裂き飛来する二筋の光輝。ひとつはマルコシアスが放つ炎の氷柱(つらら)。もうひとつは、ウヴァルが放つ破魔の矢。
 元アルマンの魔物の周囲の何もない空間に、その二筋の光輝が達した瞬間、空間自体に揺らぎのような物が発生。

 一瞬の攻防。しかし、次の瞬間には元アルマンの魔物が纏う分厚い精霊の護りを貫き、二筋の光輝が本体を――――
 ――貫いた。
 刹那、元アルマンの魔物が絶叫した。それは正に此の世ならざる叫び。
 左右、身体の両サイドから侵入した蒼白き光は共に肩を貫き、其処から先の部分。両腕を大地へと跳ね飛ばし、血液とも、闇とも付かない赤黒い何かを枯草に覆われた地面へと撒き散らせた。

 流石はソロモンの魔将。相手がメソアメリカ最大の邪神の憑坐とされた存在で有ったとしても、あっさりと無力化に成功するだけの実力を持って居ると言う事か。
 そう感心した後、未だ身じろぎひとつせず、俺の胸の中に存在する少女に視線を移そうとした正にその刹那。

 完全に無力化されたはずの元アルマンの魔物
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