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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第92話 血の盟約
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 その姿は、ある種の美しさが存在して居るのかも知れない。

 五芒星の炎を反射して、てらてらと濡れたように光っているその表面。それすらも嫌悪と同時に、神々しさを感じる。
 淡い燐光に包まれたその凄み……。威圧感は神と言う無限の高みに繋がるヤツラにこそ相応しい。

 そう考えてから、しかし、少し首を横に振る俺。それは、ヤツが実際に何らかの粘液で濡れていたのかも知れない、と考え直したから。
 何故ならば、ヤツは水の神でも有りましたから……。

 刹那。猛り、狂った異形の声が周囲に轟いた。

 そう、その場に顕われて居たのは地上に降臨した異教の神。常識やこの世界の理から外れた異形。ただ、その場に居るだけで、周囲を不条理と恐怖に満ちた異界へと誘う魔物。
 人間で有る事を放棄して、彼岸の存在へと変化したバケモノ。

 その生命体を示す色は黒。闇の中に有っても尚、黒曜石の如き輝きを示す。身長はおそらく三メートル以上。人類として最も背の高かった人間よりもおそらく三十センチ以上は大きいでしょう。但し、身体付きは人間そのもの。行き成り、身長が一メートル以上伸びたにしては、頭部が有り、腕が二本、足らしき物が二本。尻尾が有る訳でもなければ、首が三本、腕が六本などと言う見た目からして人外と言う様子ではない。
 そう。脚が一対。腕が一対。首はひとつ。数が多い訳ではなく、更に位置が異常な訳でもない。完全な人型。
 貴族に相応しい容貌を覆う仮面。闇の中に光るその仮面は、おそらく翡翠の仮面。テスカトリポカを召喚する際に触媒として使用される呪具。

 その場に存在していたのは、有りとあらゆる生命……。いや、もしかすると無機物すらも恐怖するかも知れない()()が存在して居たのだ。

 再び、振り下ろされる斧に似た音が響き渡る。その瞬間、また一歩、異界……。おそらく、テスカトリポカの支配する異世界が近付き、通常の世界が侵食されて行く。
 人が営々と築き上げて来た価値観を一瞬に破壊。世界に開いたたった一か所の次元孔から這い出して来た存在に因って、世界は容易く向こう側の世界へとその相を移して仕舞うのだ。

 但し、当然のように、これは一年の終わりの夜に木こりが森で斧を振るっている訳ではない。眼の前に立つ異世界の魔物が発して居る異音。その胸に存在する扉が開き、赤い液体――体液を撒き散らせる。その度に垣間見える黒き闇が発する異世界の足音。
 先ほどまで地上を照らして居た五山の送り火の明かりが、今では、元アルマンの胸から発生する闇に因り、徐々に光が駆逐されている。

 軽く右腕を振るう元アルマン。その瞬間、限りなくゼロに近い厚さの何か――。普通に、達人クラスの剣の使い手が剣を振るった瞬間に発生させる衝撃波とは違う、光とも、闇とも付かない何かが発
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