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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
23.囚人の狙い
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ない」
「あァ?」
シュトラ・Dが腕をそのまま止める。
「“No.014”……
固有堆積時間
(
パーソナルヒストリー
)
操作の魔導書ですか。なるほど……面白い」
「どういうことだよ、冥駕?」
「馴れ馴れしくその名前を呼ばないでもらいたいのですが……まあいいでしょう」
不愉快そうに眼鏡を直す、冥駕と呼ばれる青年。
「要するに、呪いです。仙都木阿夜は魔導書の力を借りて、“空隙の魔女”に呪いをかけた。今の南宮那月は、おそらく記憶をなくしている──そうですね、仙都木阿夜?」
「そう……だ。正確に言えば、奪ったのは記憶だけでなく、やつが経験した時間そのものだがな」
「他人の肉体の堆積された時間を奪い取る……それが“
図書館
(
LCO
)
”の
総記
(
ジェネラル
)
にだけ与えられるという魔導師書の能力ですか。いえ……違いましたか……あなたも持ってましたね……」
平坦な口調で青年がローブで全身を包んだ者へと視線を向ける。
ローブの者は微動だにしない。
その者の空気だけがほか誰とも違っていた。強烈な殺意もない、憎悪も感じられない。
だが、その覇気はその場にいるものにそこしれない圧力を与えている。
「完全に魔力を失う直前に、南宮那月は逃走したようですが、あなたが魔導書を起動させている限り、彼女はもう二度と魔術を使えない。あとは我々の中の誰かが、逃走中の彼女を見つけてとどめを刺せばいい、というわけですか。仙都木阿夜?」
眼鏡の青年が、冷静な口調で確認する。
「そういうことなら、手を貸してあげても良いわよ、仙都木阿夜。あの女を殺したいと思っているのは、みんな同じ──早い者勝ちということでいいかしら?」
菫色の髪の女が、自分の左腕の枷を見ながら微笑む。
「ケッ、面倒な話だが、まあいいか。長い牢獄暮らしで身体も鈍ってることだしな。リハビリには、ちょうどいいかもしれねェな」
彼の言葉に同意したように、ほかの脱獄囚たちも無言でうなずく。
その時点で彩斗は限界だった。
まだ少しだけ痛む身体を起こし、脱獄囚たちを睨む。
「ざけんじゃねぇぞ……そんなこと聞いてミスミス行かせると思ってるのか」
「……アァ? なに言ってんだ、このガキは……?」
シュトラは鬱陶しげに彩斗の方へと視線を向ける。
後方で胸の傷口を押さえながら、古城も立ち上がった。
「そういえば、あなたがいましたね。第四真祖。それと……あなたは……?」
物静かな口調で、眼鏡の青年が告げる。
「俺はただの
神意の暁
(
きゅうけつき
)
だよ」
だが、誰一人として古城と彩斗に恐怖するものはいない。世界最強の吸血鬼を二人を相手にしても、自分が敗北するなど思っていないようだ。
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